「青空に手を伸ばした」で始まり、「その目の強さが好きだった」で終わる物語
青空に手を伸ばした友人は、口癖のようにいつもこう言っていた。
「あの空の向こうに、いつか行く!」
彼女は空の向こうに恋をしていた。
その様に僕は引かれ、僕は彼女を手伝う事を約束した。
彼女は夢に向かって必死に努力し、僕はそれを隣で支え続けた。
そして遂に彼女の努力が報われることになった。
出発の前日、僕は彼女と夕食を共にし、これまでの長く険しい道のりを思い出すように遅くまで語り合った。
そして出発の当日。
遠い彼方へ旅立つ彼女に、僕は一言だけこう言った。
「いってらっしゃい」
彼女はこう返した。
「ええ。土産話を沢山持って帰ってくるわ」
そして戻った管制室の沢山のモニターには、高度5万メートル手前に咲いた巨大な花火が映し出されていた。
……あれからしばらく時は流れた。
僕は思い出の河原に寝転がると青空に手を伸ばし、最早口癖となった“届かなかった言葉”を青空に向かって呟いた。
「僕は君のその目の強さが好きだった」
元ネタはチャレンジャー号です。