不気味なお味噌汁
昔々、あるところに、客足のないボロい店があった。
その近所に住む者でさえ、その店に客が来ているのを見たことがないという。
ある日、暗い夜の中、ある者が周りをキョロキョロとしながらその店へと入っていった。
店でその者が頼んだのは、単品の味噌汁だった。
たくさんの種類の具が入った味噌汁がその者のもとへと運ばれる。
その味噌汁に、親指、人差し指、中指の三本で持った箸を入れ、具を取り出す。
赤子のように柔らかく、尚且つ弾力があり、そしてぷるぷると動いている。
それを食べた瞬間、目が飛び出る程の衝撃が走った。
すぐさま次の具を取り出す。
次に掴んだのは独特な形をしている具だ。それは納豆のような粘りけがあり、それを食したと同時、味噌汁のにおいが鼻を刺激する。
次に取った具は平べったく、少し大きな具。
それを食し、次の具材へおもむろに箸を進める。
箸が味噌汁の中へと浸かる音が耳を癒し、取った具材はこれまた摩訶不思議な具だ。
相変わらずこの味噌汁には普段知っている味噌汁の具はひとつも入っていなかった。
それでもその者は味噌汁を腹を空かせた子供のように食べ進める。
一気に口の中に入れれば味など分かるはずがないというのに。
カリカリとし、肉がついている具材を食べる。
すると食欲が増したのか、三本の指で礼儀正しく持っていた箸を今度は握りこぶしで持ち、具材を口の中へと進めていく。
最後には、その者は自分の鏡で自分の顔を見て、満足していた。
味噌汁で腹は膨れていない。
それでもその者は満足して、店を後にしたという。




