まだまだ、夢から覚めない。
もちろん小さな小競り合いはあるが…。
戦争…この場合は内戦になるが、それも起きてはいない。
「おいしいでちゅか~~~?」(おいしいよな…♪)
「ふふ…一生懸命に吸ってるわ」(かわいい…♪)
俺は3歳になった。
父親の激甘い言葉をたくさん浴びせられ…母親の愛情をたっぷりの母乳をもらい、今なおすくすくと育っている。
「まだまだ、あまえんぼさんでちゅね~~~」(わたしに似すぎたかな?)
「そうね…誰に似たのかしら?」(あまえんぼさんが二人…♪)
しかし、あれだ…離乳は1歳だと思っていたが…案外もらえるモノなのだな…。
もちろん飲んでいる母乳は、弟と妹の御蔭で飲めているようなものであり…1歳違いの弟と妹は、1歳半を過ぎるとそれほど母乳を強請らず…離乳食を好み、弟と妹が飲まなくなった母乳を俺が物欲しそうに見つめていたら飲ませてくれた。
「うーむ…これは難問だ…ね~~~?」(嫁さんが魅力的すぎるのが問題だ♪)
「そうね…難問よね………」(旦那様が大好きでしょうがないのが問題よね…♪)
けっぷ…。
慣れたものだ…。
ああ、最初は親が背中をさすってもらわないと出てこなかった。
あれだ、意識があり始めた時は自力でやろうとしても出てこなくて苦しかった。
こればっかりは、体験しないと説明のしようがない感覚で…なんというか、力が入らないというわけじゃなくて…力を入れたい所に力が集中しない感じに近いと思う。
「かわいいな~~~おおきくなったらもっとかわいいだろうな~~~」(たのしみすぎる…♪)
「そうね…どんな姫になるのかしら?」(しあわせになるのよ…♪)
…そいえば、俺…女でしかも姫なんだよな…。
…。
……。
………はぁ……………………………つらい。
何がつらい?もちろん体のコントロールと理解してもらえるだろう。
長年使い続けた体はオレの意思をしっかり受け取り、その可動範囲で違和感なくスピーディーに対応してくれた。しかし、この体はスローリーで中々動かしずらい…まあ、まだまだ幼子と言うのもあるだろうが…将来的にどれほど動けるか期待して鍛えてもあまり良いイメージが浮かばない。
「おっと…お仕事お仕事」(今日は…モリモリマシマシ地区の議題だったな………)
「がんばって…♪」(この子たちの為にも…♪)
「ああ…行ってくるよ♪」(キスして…ちゅー♪)
っく…この甘い親のラブラブは未だ衰えない…。
とても良い事だが…未だに夫婦の営みを見せてもらえないのに納得がいかない…。まあ、俺は男だから失礼になるのかもしれない…しかしだな、これは夢だろ?どうしてそう思うかって?簡単だ…この体で寝ている時に、サラリーマンの体で仕事したり食事をしたりしている。
そして、この体が夢と思えるのは…あまりにも非現実的だからだ。
だってそうだろう?
俺は普通のサラリーマンで、とても真面目な市民だ。
人の心の声なんて聞こえないし、そもそも分からないから日々悩まされている。
その証拠に、一昨日は上司に理不尽な説教と責任を負わされ…その対応に奔走してたからな。
「さて…ネムネムかな?メイサ」(飲んで寝て…ふふ♪)
「はい…承知しました」(ベッドへ…)
おぅ…眠気が………。
母親の母乳をもらうたびに少し寝ないと行動できなくなる。
これは、恐らく幼子の性質なのだろう…サラリーマンの俺なら食べてすぐ寝ると言う事は無かったからな。
やさしい声と、あたたかい胸に包まれ意識を手放す。
・
・・
・・・
・・
・
「……ろ」
「………ん…」
「…きろ」
「………はい?」
「おきろ!!」
「はい!!!!!!!!」
「まったく…お前はにしては珍しいな?どうした?そんなに今回は厳しいのか?」
「いえ、大丈夫です。問題ないです!…ただ、ここと、ここが、ぶつかって…」
「ああ…そこな。今回はそこの問題を解決して、勝負していくところだ」
「ですよね…任されているからには、全力を尽くして勝負に勝ちます」
「おう、期待してる!がんばれよ…困ったときは頼れ!それが…一流の仕事をするものだぞ」
「はい!」
はぁ…しかし、長く眠っていた気がする。
根を詰めすぎているのか?俺は………、いや、ここは腕の見せ所!あっ、情報課の“あの人”ならもしかしたら解決できるのでは?よし、聞きに行ってみよう。
「おーい」
「はい?」
「お前の所の古い問題、データ見直のファイルほしいって」
「分かりました!すぐお持ちします」
あの古い問題ファイルは…この引き出しに………。
ガチャン!
あれ?鍵は………どこだっけ?
たしか…ここの引き出しに………ないな。
んーじゃあ、鍵管理室のを借りるか…。
鍵管理室は、地下5階だったな…階段で行くか?エレベーターで行くか…。
まあ、ここは階段を使ってエレベーターだな。
さて、階段階段………。
ん?あれ?階段はどこにあったっけ?
んーーー?こっち?いや、そっちだったか?
…。
おかしい、慣れた会社で迷子とか笑いにならんぞ。
しかし、困ったときには頼る。一流の仕事をしないとな。
「すいません」
「はい?」
「えー地下の階段はどこでしたっけ?」
「ああ…社長室の奥からですよ」
「え?そうでしたっけ?」
「そうですよ?」
「そうですか、ありがとうございます」
「どういたしまして」
俺は社長室に足を運んだが…今度は社長室が見当たらない。
何故だ?
こんなにも迷子になるなんて…。
あ、これは…。
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