社務日誌 16
新年度です!いつもお読みいただきありがとうございます。
ブクマしてくださってるかた、ありがとうございます。
今回は短めです。東、家田回になります。
「丸くおさまったみたいですね」
「・・・・勉さん来たら治めなきゃいかんでしょ」
小島勉が乗り付けてきた、軽トラに高柳が乗り込む。
それを笑顔で見送る葵を境内から見守っていた、東と家田は大きく嘆息しながら、お互いに顔を見合わせ、微笑みあった。
二人とももう私服に着替えているが、ちょうど境内から引き上げる葵たちを見かけ、心配で背後から様子を伺っていたのだ。
「どうする?葵ちゃん、誘おうか?」
「ふふっ・・・そのうち桐原さんが迎えに来ますよ」
どんぴしゃだ。見守ってると、桐原が慌てた様子で葵に駆け寄っているのが見えた。
「・・・紘香、あいつに連絡したの?」
「そうですね、うちの巫女に何かあっては困りますから。もう少し早く来てくれたらもっと面白かったかもしれないのに、残念です」
「・・・・」
それは元カレだと思っている高柳をあおるつもりだったのか、と家田の存外、黒い所を垣間見て、東は苦笑した。
「そうは言っても、桐原も高柳もほんとは付き合ってないんだよ。桐原が寄りすぎたのを高柳が勘違いしただけで」
「・・・嘉代さんとも、付き合ってないですもんね、桐原さん」
にわかに鋭いまなざしで家田が東をとらえる。
家田は、その件を知っていたし、勤務中の話で、葵に説明をしてる時にも確認がてら聞いていたことだ。
何をいまさら、と東がその視線に戸惑うような表情を見せると、家田はその長いまつ毛を何度か瞬きさせて、少し、眉をひそませた。
「葵ちゃんに言ってた、とても大切な人、でしたっけ?・・・そんな方がいるって、私、聞いた事ないんですけど」
「!」
東の顔がさっと赤くなる。
「いや、あれは、その、葵ちゃんを安心させるためで・・・」
「そうでしょうか?そういう表情には見えませんでしたけど」
東はバリバリと前髪を掻いた。
「気のせいだよ!」
「・・・そうですよね、じゃなきゃ、私を差し置いて、葵ちゃんに話すなんて、ないですよね?」
どうやら、家田は少し拗ねているらしい。葵よりも自分が東により近いだろう、と。
東は目を丸くして、一瞬、その様子を見つめていたが、やがて柔らかく破顔すると、家田の肩を抱き寄せた。
「はいはい!じゃあ今日は一緒になべ焼きうどん食べに行こう!久しぶりに色々お話ししましょう、紘香さん」
「・・・なんなら、うどん食べながら、とても大切な人ってのがいるなら聞いてもいいんですけど?先輩?」
「今後の参考にでもするの?」
「参考になれば、ですけどね」
二人はくすくす、と笑いあった。
正直、出会いの少ない神社では、行動あるのみ、というのは、十分理解してるつもりの二人だ。
駅前に向かうバスが車で、あと数分。
二人の吐く息はほんのりと白く曇った。
(とても大切な人、ね・・・)
東の胸中には一人、存在していた。
誰にも言えない。
静かに思うだけの、ただ、一人が。
読んでいただき、ありがとうございまじた。
もしよろしかったら、またお越しくださいませ。




