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社務日誌 14

気が付いたら、いいねの数が増えて!評価まで増えて!重ね重ねありがとうございます。

こちらにお運びいただける皆様方に心より感謝申し上げます。


今回は社務所回。神社の事情をちらりとおみせいたします。

大祭の数日後の社務所。

巫女長の家田は新たな勤務表を前に、難しい顔をしていた。


「お疲れ様~。ひろか、何それ・・・あ、七五三対応勤務表?」


外祭から帰ってきた東が、ひょいっと覗き込んできた。


「今年は人の流れが読めないんですよね。土日に吉日が少なくて、平日に大安、友引があって」

「最近は子供のために有休とって、みんな休んでお参りに来るもんね。平日でも吉日は我々も外に出ちゃうから、大学生とかにバイト頼める人がいたらいいんだけどね」


家田と東が眺めている勤務表は10月の3週目あたりから11月の末日までのもの。

七五三対応に作られた勤務表だ。普段からのレギュラーメンバーに加えて、バイトの巫女や助勤の神職の力が必要となる時期だ。


家田は勤務表に必要とする人員を予測し、正月などの忙しい時期によく来てくれるような学生に連絡をとりつつ、調整をしていく。


無論、この時期になると、近辺から、正月等を見越してアルバイトに自ら応募してくる高校生などもいるので、新しく発掘する方法もある。

ありがたいことに、そこそこ神社の名前も通り、近所の評判もよいため、求人を出したことはない。大概、先方からの売り込みをそのまま受け取り、面接して、余程の事がなければ採用、という形をとる。

以前ハローワークに求人を出したという神社もあったと聞くから、ここは恵まれているのだ。


普通の飲食店などのバイトに比べたら巫女のバイトは薄給かもしれない。

それでも、親が神社でのバイトだったらよい、と送り出してくれたり、巫女さんの恰好がしたいから、等の理由での応募だから、本人たちも納得して勤めてくれる。


なのだが。

とにかく色々な子がやってくる。働いたことのない、高校生がくるのだから、当たり前だが、遊びの延長線と勘違いしている者もいるし、協調できない者もいる。

その教育を任されているのが巫女長たる家田となる。

無論、東も元巫女として、口を挟むこともあるが、基本的に家田に任せている。

この時期、家田の裏方としての技量が、一番発揮されることとなる。


七五三で人事を把握すると同時に、人事が動いていく時期になる。

家田は大祭までの勤務表をちらりと見返して、微笑を浮かべた。


「瀧さん、宮園さん・・・そして一色さん。いい感じだわ」

「ま、その三人を主軸に組めば結構いい感じでしょ。三人ともちゃんとしてるし、ま、難を言えば、まだ高校生なんだけどね」

「・・・平日はなんとかするわ」


大祭で舞を奉納した二人と、葵の名が挙がる。家田が安心できる、バイトの巫女、である。


「今年は受験生の正歩君には頼めないしね」

「あのー、そもそも、中学生なんですけど、私」


新たに加わった声に、一瞬、慌てて、家田と東が振り返る。


「正歩君!」


社務所の扉に手をかけたまま、きれいな笑顔で、白衣姿の宮司の子息が立っていた。


「大丈夫ですよ、私、土日は半分は手伝うようにしますから」

「え?そうなの?」

「勉強ばかりしてたって、頭に入りませんよ。気分転換になるから、と両親には言ってあります」


するする、と流れるような動きで、社務所に入ってきたかと思うと、正歩は、家田の持っていた勤務表を取り上げ、助勤者欄に自分の名を書き連ねた。


「神様の手伝いくらい、させてください。神様のことしてて、悪いことにはならないでしょう?」


正歩は神社の仕事が嫌いではない。純粋に、家の手伝いを行う一環でこう申し出てくれているのだ。家田も東もそれを知っているから、顔を見合わせて、微笑んだ。


「ありがとう、じゃあお願いするわ」

「はい」


優等生なところがかえって心配だが、正歩は快諾した。


「そういえば、正歩君さ、最近、笛、始めたの?」

「・・・すいません、お耳汚しで」


東がふと、思い出したように問うと、正歩は少し照れたように顔をそむけた。

最近、夕暮れ時に、笛の音が参集殿から聞こえてくる。

のびやかな音で、聞いててすがすがしい。

聞いたことあるような雅楽の曲、と東は思ったが、題名までは知らない。

宮司夫妻が雅楽を始めたという話は聞いてなかったし、時間的な動きから、正歩だろうと、推測していた。


「雅楽、だよね?龍笛?」

「はい、縁あって、手元にきたものを吹かせてもらってます」

「そうなんだ・・・あ、舞の曲とかも吹けるようになる?」

「え?・・・蘭陵王、とかですか?」


あの曲はちょっと高音が苦しいし、初心者にはちょっと・・・と正歩が言う。

それを聞きつつ、家田は別の事を考え始めていた。


「神楽笛」


ふいに、家田が顔を上げて、ぽつり、と言った。


「え?」

「神楽笛って、龍笛より音出しやすいって聞いたんだけど」

「はあ・・・まあ、人と楽器によるでしょうけどね」


何のことやら、と正歩は首をかしげる。


「ねえ、正歩君、来年でいいからさ、神楽笛もやってみない?それで浦安か、豊栄吹いてみてよ。そしたらこっちの好きな速さで舞ができるようになるし」


今度は正歩と東が顔を見合わせる番だった。嬉しそうに夢見るような顔で語る家田に、二人は苦笑する。


「そうですね、やれれば、やってみてもいいですけど・・・どうせなら、家田さん、一緒に雅楽でも学びませんか?」

「え?」

「私のはまだ独学でなんとも言えないんですけど。受験終わったら、どこかの雅楽の会に所属して、稽古してもらおうかな、って考えているんです。よかったら一緒にどうですか」

「え・・・私が?」

「いいじゃん、ひろかの新しい境地が開けるかもしれないし。」

「そうね・・・そういうのも、いいかもね」


思わぬ提案に、家田は少し浮き立つ気分を感じていた。もともと神社でのプラスワンの力が欲しかった巫女長だ。新しいこと、神社に役に立つことができるならば、こんなに嬉しいことはない。


手伝いに来たのだから、と更に言って、仕事を要求する正歩に、とりあえず、御札の数の確認をお願いして、家田は再び勤務表に目を向けた。

先に新しい楽しみができたようで、気持ちが明るくなる。

巫女の勤務を早々に決めて、まずは第一波の繁忙期を乗り越えよう。

先に来る第二波の正月はまだ先だ。


まずは、七五三。これから忙しくなる。







ゆっくり更新ですが、おつきあいいただき、ありがとうございました。

またの御来駕をお待ちしております。

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