52 幸手へ
ブクマ登録してくださった方、ありがとうございます。こんな増え方すると、驚きです。
ブクマも評価もログインして、登録して、等の作業があります。それをあえて、こんな作品の為にしてくださった事に感謝申し上げます。ブクマせずに、読んで通ってくださってる方にもお礼申し上げます。
で、そうなると、ますます、文のつたなさに反省が出るのですが、とにかく今はキチンと書き上げるを目標につづっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
浄化の日を迎えた。
早朝、幸手市へは私と由岐人さんとで向かった。
祢宜さん、正歩君も一緒に乗せて、途中まで宮司さんが車で送ってくれた。
スカイツリーの臨む駅で降ろされて、ここから、私たちは電車とバスで幸手市へ。
祢宜さんと正歩君は結界の弱い部分と懸念される秩父の柳に向かうため、そのまま車に乗って向かっていった。無論、抱節さんもついて行っている。
祢宜さんたちが向かったのは埼玉の結構西の方だ。幸手と真反対の秩父市の端だ。
宮司さんは二人を送っていったら、不測の事態に備えて、神社で待機をするという。
車の中ではものすごいくだらないおやじギャグを繰り出しては、皆に引かれていたけど、宮司さんなりの気遣いだったんだろうな。別れ際、すごく神妙な顔をして、由岐人さんと握手を交わしていた。
そう、その時の由岐人さんの表情はサキナミ様になっていた。
サキナミ様もついてきてくれたのだ。神社の地域の守りは神様にしっかりお願いしているという。
だけど、それ以降はほぼほぼ、由岐人さんの中に入り込んでいるみたいで、まるきり、由岐人さんと二人でいるみたいだった。
サキナミ様がいる安心感はあるんだけど、どこか寂しい気がして、ちょっと複雑で。
先々、サキナミ様の力が無くなって時には、由岐人さんの中に完全に同化するって言ってたけど、それがどういうことなのか、分かっているつもりで、あまり考えたくはなかった。
もう一か所、結界の弱い部分と考えられている、常陸の桜には、かまいたちが向かった。
茨城南部より若干北上、石岡市のあたりだろうか。木はもう無くて、その目的地の古墳の岩に少し力が込められているというから、かまいたちは、浄化の際に、ほころびが出た場合の補填で動いたのだろう。
私の実家の弟の元にいる、カスミンとレンカちゃんを呼んで、出来ることをする、と言ってたけど・・・大丈夫かな。
バスの窓の景色をゆっくりと目で追いながら、私はぼんやりとここに至るまでの事を思い返していた。バスの揺れは心地よく、うっかりすると寝てしまいそうだけど、かなり緊張してるのか、そうはならない。
「葵」
由岐人さんがそっと私の手を取った。
心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「不安、じゃないか?」
「大丈夫です」
笑って、それに応えると、由岐人さんは困ったように苦笑いした。
「大丈夫じゃないのに、大丈夫って言うんだよな、君も、あさも」
「ふふっ・・・そうかもしれないですね」
あれだけ、あさ、と私は違うと思っていたのに、今は自然に受け入れられている。
由岐人さんにあさと同じようだと言われても、嫌な気はしなかった。
「・・・葵、なんか、少し変わった、な」
「え?そうですか?」
そういうのを察したのか、由岐人さんがそんなことを言う。私は由岐人さんの優しい目を見つめ返しながら、照れ笑いで返した。
「いい意味で?変わりましたかね?」
「うん、そうだね」
由岐人さんが取っていた手を引き寄せ、自らの顔を近づけてくる。
「もっと、好きになってしまったかな」
「!!」
もうもうもう、この人は!
私は顔が熱くなるのを感じて、さっと下を向いてしまった。
『桐原、葵をからかうのはやめろ』
あ、サキナミ様だ。出てきた。一瞬、由岐人さんの表情が違うものになる。
「からかってない、本気だ」
これは、由岐人さんだ・・・。
由岐人さんに戻ったのが分かった。
それにしても、忙しいな。こういう状態。
でも、そこにサキナミ様がいる。だから、安心する。
サキナミ様が消えるってどういうことなんだろう。
老齢だと聞いた欅の木がふと、頭の中をよぎる。
由岐人さんの中に完全に同化したら、もうこんな風には出てきてくれない?
力を全部由岐人さんが受け継いで、由岐人さんは由岐人さんでいられるの?
「サキナミ様、消えないですよね?」
由岐人さんに尋ねたのか、その中のサキナミ様に聞いてるのか自分でもわからない。
思わず、私の口から出た言葉に、自分で困惑する。
応えたのは由岐人さんだった。
「大丈夫、大丈夫だよ」
サキナミ様は出てこない。でもそれが、サキナミ様なりの答えなのだと思い、胸が痛くなる。
「・・・由岐人さんは?サキナミ様の力を受けて、何も変わらないの?」
由岐人さんが由岐人さんでなくなるのはちょっと怖い。たとえ、サキナミ様がその体の中に入ってそうなったとしても。
今の私、余計な事考えて、きっと、みっともない顔してる。
「・・・力はもらってるから、少しは役に立てるかな。でも俺は俺だよ。」
由岐人さんはそう言ってにっこり笑ってくれた。
「葵」
そのまま、私の名前を呼んで、由岐人さんの顔が近づいてきた。
何か企んでいるような、楽しそうな顔で、私を見つめてくる。
「・・・な、なんですか?」
「これが終わったら、デートしよう。学校も慣れてきただろうし、少し息抜きだ、ね」
デート、の言葉に思わず大きく瞬きをしてしまったけれど、学校という、通常ワードをここで出されて、なんだか、張っていた緊張感が少し緩んだ気がした。
そうそう、私は扇の巫女だの、浄化してだの言われてるけど、普通の高校生なんだから。
そっちが本分。
結界を守ることで、みなの生活も守れるなら、と今は動くだけ。
そうだ、これが終わったら、亜実さんにも赤ちゃんが生まれるんだし。
色々楽しいことが待ってるんだから。
「そうですね、楽しみにしてます」
私がそう返すと、由岐人さんは嬉しそうに笑った。
やがて、バスは、目的地についた。
年末年始にかけてそれはそれは素敵な小説に巡り合うことが多く、私は時間を失ってます(笑)
まだまだ手を伸ばしたい話がいっぱいあるんですよね。
みなさんにも色々なストーリーとの素敵な出会いがありますように。




