幸波伝奇 4
WiFi壊れてるので、スマホからです。
デザリングもよくわからない(T_T)
とりあえず、書きかけのこの回を活かしました。
パソコンできるようになったら、また改訂します。必要になるでしょう。
今回も来ていただきましてありがとうございます
消え入りそうな光。
弱くて、簡単に消えて、なくなってしまう。
「私が友達になってあげるから、大丈夫よ」
そう語り掛けて通じる存在だと、幼い少女はその光に手を伸ばす。
その光はもう、そこで役目を終えるはずだった。
古い昔に自らに、人の姿を与えるきっかけをくれた青年の転生が見込まれた時、自らはそれに溶け込み、消えるはずだった。
新しい命に自らの力を持たせて、自分自身は役目を終えるつもりだった。
しかし。
少女の力は思いがけずも強かった。
(一人にしないで)
一人ぼっちの少女の願いと、無意識に与えられた少女の力が、神が働くきっかけを与えた。
「あなたは・・・誰?」
「われはサキナミ、というもの。そなたの力を借りたい」
一人ぼっちだった少女、季子に、初めて友が出来た。
見えないものを見る、不思議な力を持つ、それを気味悪がられて、幼いころに養護施設に預けられた。施設でも距離を置かれて、いつも一人だった。
そんな時だった。縁があって、幸波町のある老夫婦の家に里子として入ることになった。
不思議な事をする彼女を老夫婦は温かく、そのまま受け入れてくれた。
親の愛を、季子はそこで知る。
そして初めての友は。
人には見えない、不思議な存在。
手のひらほどの小さな人。
この友のお陰で、この先、季子は、未来の伴侶となる山内 正孝とも知り合うことになる。
しかし、そうなるまでは、季子は孤独と戦っていた。
心根が優しい故に、それは時に悲しくも見えて。
小さかった季子の友人、として、
もうしばらく、この姿で杜を守ろう、サキナミノミコトが、そう思い直させた。
ただ、力は弱まっている。
また消えゆくのは時間の問題というのもわかっていた。
24年前の事だ。
「・・・本当に無理してない?」
季子・・・山内季子、となった幸波神社祢宜は、容赦ない厳しい視線でサキナミノミコトをつまみ上げた。
「してない、してない。友に誓って、無理はしてない!」
必死に足と手をバタバタさせながら、お小さい方、サキナミノミコトが抵抗する姿はなかなか可愛らしいものだ。季子は、ぶっと吹き出した。
「友って言ったわね。・・・忘れてたのかと思ったわ」
「忘れぬものか、ずっと一緒にいたじゃないか。共に戦い、この街を守ってきただろう?」
「そうね」
山内季子、にとって、サキナミノミコトは長く親しんできた友人だった。お互いに力を分け合い、共存し、この土地を脅かすあらゆるものを退けてきた。
季子がこの幸波神社の人間となってからは、祭神と仕えるものとしての立場が出来たが、私的な場での友人関係は今も昔も変わらない。
「本当に大丈夫ならよいけどね」
「今はね。嘘は言えまい」
サキナミノミコトの言葉に、季子の眉が顰められた。
「欅がまた、枯れてきた」
「ご神木の?」
季子はサキナミノミコトを手のひらに載せたまま、本殿裏の欅の前に向かう。大きな木だ。
サキナミノミコトの源だ。
もともとは、この木の精霊であり、ただこの辺りを見守るだけの存在だった。
それが、いつしか祀られ、祈る者が現れ、その真摯な姿に人の形を得て、それを大切に守ろうとする者に情を覚え、いつしかサキナミノミコトの名を持つカミとなった。
そうさせた人間と、サキナミノミコトよりはるか大きな所で世界を包む実の神の存在が、今のサキナミノミコトの存在する所以である。
「これが枯れれば、我は元を失う。文字通り消えることになるな」
「なんとか、ならないの」
「一度、季子の力を借りて永らえたが、今回はもう駄目だ。本当に木の寿命が来てるのだよ」
「桐原君の中に生きるのはできないの?」
「今のままでは難しいかな。少し間借りすることはできるが、お互いに難しい状態だ」
それがどういうことなのか、なぜかと問われれば、神として相応しい答えをサキナミノミコトは今、持っていない。
思いもかけない出会いがあったから。
一色 葵との出会いだ。
まだ10歳の彼女と出会ったのは、6年前の夏の祭典の数日前の事だった。
見てすぐにわかった。
あの娘の生まれ変わりだと。サキナミノミコトの名がついた、あの時、目の前で散っていった悲しい娘の姿が思い出される。
切ないほどの想いがあふれて、抱きしめたいと、近づきたいと、そう思った矢先。
事件が起きる。
葵は放火魔の犯行を目撃して、その身を狙われてた。
彼女自身は目撃した自覚はなかったのだが、放火魔の方が勘違いをして、ずっと葵を追い続けていたのだ。
サキナミノミコトの昼間の潔斎中に葵は拉致された。
前世のつながりがそうさせたのか、それを悟ったサキナミノミコトはすぐに行動に移す。
ただ、力が足りない。
祭典に向けて力を蓄えている最中だったが、急ぎ彼女を助けるには力が足りなかった。
サキナミノミコトは自分の半身の生まれ変わりを見つけ出し、一体化する。
そして。
放火魔に火をつけられた小屋の中で、囚われていた葵を助け出したのだ。
必死だった。
この腕の中に葵がいることに、ほっとしたが、自分でない自分のその手の感触に、戸惑った。
今は人間となっている、のだから。
言い聞かせながら、その場は納めていた。
ともかく、
無事に、助けられた。
恐怖から混乱する彼女を助けるため、記憶を消し、傷などもすべて綺麗にして、八百藤に送り届ける。
なんだろう。この思いは。愛おしいという思いと共に、苦しい。自分の今の姿を作った人間の生まれ変わりが葵に想いを寄せていることが、何故か苦しい。その者も確かに自分の一部なはずなのに。
それが原因だったのかどうか、わからないが、
サキナミノミコトと半身となる人間の中の力が不安定だったために、一体化はほどなく解けた。
放火を消した水の力を浴びたまま、サキナミノミコトの半身、桐原 由岐人は神社境内地で発見される。
サキナミノミコトは自身が消えゆくまで、体を分けたまま、葵を見守り続けようと、そう思った。
桐原になりきれなかった。桐原として、葵に近づけなかった。
今ある自分のままで、葵と話がしたいと、触れ合いたいと、切に思ったのだ。
今、サキナミノミコトは幸福感を感じていた。
たとえ前世からの想いを伝えなくとも、葵が気づけなくても。
そばにいられることに。
ただその時間はもう限られている。
「大事にしてください、サキナミ様」
態度を改めて、禰宜として、季子は頭を下げる。
「私も祈らせていただきます。ここを守るべきよい方策が得られるよう」
言葉尻が震えている。季子が心配してくれているのが、伝わり、サキナミノミコトは静かに微笑んだ。
「葵もいる。今すぐに私が消えることはないが、そう遠い話ではない。正孝にも伝えておいてくれ」
「はっ」
頭を下げたまま、季子はふと、欅の根元の部分に違和感を感じた。
(何かしら)
何かいる、という感じは受けないが、そこに忘れてはいけない事柄がある、と季子は直感した。
(どうして)
季子は本殿から立ち退きながら、一人思案にくれた。
(どうして欅はあそこにあるのかしら)
今まで考えもしなかった、当たり前すぎる事。
それに気づいた時、理由も分からず、季子は妙な不安を覚えていた。
うーん。しんどいですね、スマホ入力。向いてないです。
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でもこんなんです。はあ




