模擬戦、決着とレイのスキル
遅ればせながら投稿です。
キリがよかったので、めっちゃ短いです。
次話も近い内に出せると思います。
「では……はじめっ!」
カレンの合図により、レイとジェイルの模擬戦が始まった。少々の睨み合いの後、先手を取ったのはレイだった。
「水霊よ、我が手に集いて差し貫け!」
「はっ、ちっちぇ水剣だなぁ!」
レイの繰り出した水の剣は、スピードとサイズが足らずに、難なく炎で蒸発されてしまった。彼は、魔法を使うのに長けていない。それが、結果となって彼にのしかかる。
そして、俺の番だと言わんばかりに、ジェイルも魔法を放つ。
「炎精よ、真紅の炎にて焼き尽くせ!」
「うわっ!?」
ジェイルの右手から、凄まじい熱量を誇る炎弾が数発分放たれる。目の前を通り過ぎた炎がレイの黒い前髪を掠った。初級魔法なのに、この威力。直撃すればただでは済まないだろう。
続いて放たれた炎弾をレイはステップで躱す。更なる後続の炎弾も全て躱していく。10、20、30……数をこなす毎にレイの動きに余裕がで始めた。数をこなす毎に動きが良くなっているように見える。
「すごい、あんな数の炎弾を躱すなんて……」
と、レイの凄まじい回避能力に、外野もにわかにざわめき出す。ジェイルは次第にイライラしてきたのか、ヤケになって、連続してあり得ない数の炎弾をレイに向けて放つ。しかし、そのどれもレイの身体に傷をつけることはなかった。
「チィッ、なんで当たんねぇんだよ!」
「……」
ジェイルの度を超した攻撃に、カレンが静止をかける。
「ジェイル、やめろ、初級魔法とはいえ、やり過ぎだ!」
だが、完全にヒートアップしてしまっている彼に、その声は届かない。その間にも絶え間なく放たれる炎弾の雨を、レイがことごとくを躱す、躱す、躱す。観戦する側も圧倒されるほどの凄まじい熱と光の中、レイの黒髪だけが目立って見えた。
カレン先生が無理矢理止めようと魔力を練っている矢先、終局は突然に訪れた。かすかに見えていた、レイの姿がブレたかと思えば、その直後に炎弾の雨が止んだ。
炎が晴れた先にあったのは、尻もちをついたジェイルの喉元に、レイが水剣を突きつけている姿だった。
「チェックメイトだ」
「くっ……」
「そこまで! 勝者レイ!」
「「「わぁあああああ!!」」」
レイとジェイルの模擬戦は、レイの完勝となった。彼はジェイルに手を差し伸べるが、ジェイルはその手を払い、舌打ちを一つ残して、無言で去っていった。明らかに異様な様子だったが、レイは無理に引き止めようとはしなかった。
クラスメイトたちがレイに駆け寄り、皆一様に口を揃えて彼を褒め称えた。凄いだの、おめでとうだの、カッコいいだの、魔法上手くなったじゃんだの、多くの言葉が飛び交う中、ルミアの言葉がレイの耳に届いた。
「レイくん、さっきの炎弾躱してたの、凄かったよ! どうやってたの!?」
「確かに」
「気になる!」
他のクラスメイトも興味津々でレイを見つめる。彼は苦笑いしながら言った。
「実は俺、『ヴォイドリーテンポ』っていうスキルを持ってて、それのおかげだよ。相手の攻撃を躱せば躱すほど、自分の身体能力が強化されていくんだ」
「え、レイくんってスキル持ってるんだ! 凄いね!!」
「はは、ありがとう、ルミア」
『ヴォイドリーテンポ』は、レイの説明通り敵の攻撃を躱すごとに発動者の身体能力を強化するスキルである。10秒以内に次の攻撃を躱すと、更に強化が上乗せされる。
しかし、少しでも掠ってしまえば、強化はリセットされ、また一からカウントがスタートする。なので、連続する攻撃を全て躱しきる技術が必要となる。
「へぇ、レイがスキルを持っているなんて知らなかったな。しかし、その後の水剣、見事だった。私も魔法使いだから剣術には詳しくないが、綺麗な剣筋だったと思うよ。よくやった」
「先生、ありがとうございます!」
カレンからも褒められ、レイのニヤニヤは止まらない。初の模擬戦勝利である。思い切り叫びたい気持ちもあるだろうが、心の内に留めておいたようだ。練習の成果が出てきたかも、と浮かれつつレイはクラスメイトと共に教室に戻っていった。
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作者は狂喜乱舞します。