表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

模擬戦

 怪盗スカイによるピンクダイヤモンド事件の翌日。学院の魔法実技演習棟にて、レイのクラスの授業があっていた。


「今日はクラス内で模擬戦をしてみようと思う」


 と魔法実技担当教師ことカレン=フレイザーは言った。それに対してクラスは沸きたった。一年生でかつ入学したてというのもあり、未だ実戦形式で魔法を使ったことがないのだ。教師であるカレンや的を相手に魔法を使うことこそあれど、対人は初めてだ。


「模擬戦のルールは一対一で、初級魔法以外の使用を禁ずる。万が一にでも重傷を負わせる訳には行かないからな。どちらかが初級魔法以外を使ったらそこで試合は中断。使った奴には何らかのペナルティを課す。わかったか?」

「「「「はい!!」」」」


「レイくん、緊張するね……人相手に魔法を撃つなんて」

「まぁな。俺は緊張とかそれ以前に、魔法がちゃんと使えるかが心配だ」

「大丈夫だよ! 今まで頑張って来たじゃん!」

「ルミアは……心配しなくても大丈夫だよな」


 レイには、魔法の才能が比較的低い。対するルミアは、魔法に関してはピカイチ。レイは授業で習ったことを口に出して反復しながら、一組目の試合を見る。


「では最初は……ルミアとセリアスでいいか?」

「はい!」

「ふっ、僕を選ぶとは先生もお目が高い」


 威勢よく返事をしたルミアと対照的に、金色の前髪を掻き上げながら、格好つけて返事をしたのはアルト=リライト。そこはかとなくナルシストな雰囲気漂うアルトだが、事実ナルシストである。


 そんな二人はカレンの指定した場所で向かい合い、互いに礼をする。半歩下がり、開始の合図を待つ。


「では……はじめっ!」


 魔法実技の初戦の火蓋が切って落とされた。ルミアが素早く魔法を詠唱する。


「炎の精霊よ、我が敵を燃やし尽くせ!」

「水の精霊よ、集いて盾となれ!」


 対するセリアスも、ルミアに勝るとも劣らない速さで対抗する。結果、両者の魔法は相殺され、また睨み合いが始まる。


 その後も数分に渡って、互いに魔法を連打し続けた。すると、ようやく戦況に変化が起きる。


「激風よ、その腕を以て薙ぎ払え!」

「水霊よ、我が手に集いて━━うわっ!?」


 ルミアの放った風の魔法が、セリアスの足元をすくい、バランスを崩した。そこにチャンス到来とばかりにルミアの魔法が炸裂する。


「雷電の使者、雨雲より来れり」

「アババババババ」


 ルミアの放った雷の魔法で、あえなくアババされるセリアス。初級魔法なのでさほどダメージは通らないが。雷の魔法は速攻性が高いので、牽制から僅かな隙を突いてのトドメなど、なかなか優秀な属性だったりする。


「そこまで! 勝者はルミアだ。拍手を」

「やったぁ、勝てました!」

「うぅ、あれでまさか転ばされるとは……」


 ルミアは満面の笑みを浮かべ、喜びをあらわにしている。最初にめちゃくちゃ気取っていただけに、悲壮さを増しているセリアスをよそに、模擬戦は進んでいく。


「二組目はアイリスとスタンレーで━━」


 その後も滞りなく試合は進んでいく。ルミアとセリアスの試合ほどでは無いが、長丁場となって見る側がハラハラする試合もあった。


 そして遂に、彼の出番が来た。


「15組目は、レイとジェイルで行う。最終戦だ。二人とも頑張ってくれよ」

「やっと俺の出番か。でもレイじゃ相手になんねぇな〜」


 ジェイルは大柄な男子で、魔法使いというより騎士の方が向いていそうな体格をしている。しかも、彼が主として使う魔法は『身体強化』。属性魔法と併用して、拳から風を起こしたり、蹴りで火花を飛ばしたりもできる。また、足を強化して接近し、ゼロ距離で魔法を撃ったりもできる。魔法使いは接近戦が苦手な人が多いため、彼は魔法使いにとって相性が悪い。逆に言えば、距離さえ取れれば、彼は決め切るのが難しくなるということだ。


「レイくん、頑張って! 練習の成果を見せつけてやってよ!」

「うん。ルミアありがとう。頑張るよ」

「……チッ、またルミアはレイばっかり贔屓しやがる……」


 ルミアがレイを応援する。レイも微笑みで答えて位置につく。だが、もう一方、ジェイルの呟きは小さく、誰にも届いていないようだった。


「では……はじめっ!」


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ