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怪盗の拠点の話。

 アーノルド家の屋敷から脱出し、スカイが向かったのは、なんとアトラス魔法学院。なんと、この学院の一室、『魔法工学研究室』が彼の本拠地なのだ。魔法工学研究室は本棟とは離れている小さな小屋のことだ。


 レイは魔法工学部、縮めて魔工部に所属しており、また怪盗スカイの本拠地としても使われている。本拠地とは言っても、簡易的な集合所のように使っている。むしろ、この部屋を実効支配して使っているのは『博士』だけだ。


「よぉ、博士。ピンクダイヤモンド、しっかり貰って来たぜ」

「早かったじゃないか。私も七つ道具、幻の八つ目の構造が練れてきたところだよ」

「毎回言ってるが、八つ目ができたら七つ道具じゃ無くないか?」

「大丈夫だって」

「何が大丈夫なんだ……」


 この白衣の女が『博士』。スカイの七つ道具の開発者にして、魔法工学の天才。名をダスト=コーリナーと言う。まるで寝癖をそのまま放置したかのようなボサボサの白い髪。気怠げに細められた瞳は、意外なことにオレンジ色だったりする。学院の制服の上から羽織った白衣は特別汚れている訳でもなく、首から下は清潔感がある。ただ、髪の毛と頬の煤汚れが目立つだけなのだ。


 彼女は魔工部室の住人である。入り浸っているという意味ではなく、ここに住んでいる。なので、部屋の中には彼女の生活用品らしきものが隅の方にまとめてあったりする。


「つかお前、またやらかしただろ!? 部屋中煤まみれじゃねぇか!」

「はは、もともと薄汚れていた部屋なんだ。そう変わりはないと思うよ。それに、失敗は成功の母と言うしね」

「部屋中煤まみれなのに、お前の白衣だけは無傷なのが解せねぇ……」

「これも私自作の自動洗浄機能付きの服だからね」

「持ち主は洗浄されないみたいだがな」

「私が汚れてるって言いたいのかい?」

「鏡見てこいや! さっさと帰って風呂入れ!」

「君も一緒に入るかい?」

「アホか。俺はお宝を『納品』してくるから、部屋の掃除くらいはしとけよ」

「はぁ。仕方ないなぁ……」

「誰のせいだっての」


 こんなやり取りも日常茶飯事だ。仲が良いのか悪いのか、いまいち判断がつきづらい。そんな魔工部にはメンバーがもう一人いるらしいが、部室内には見当たらない。残念なことに魔工部のメンバーはこの二人ともう一人しかいないため、こんな狭く小さな小屋を割り当てられているのだ。学院内最小規模の部でありながら、やっていることは学院一派手だ。なにせ、怪盗スカイが属す部なのだから。


「それで、レイ君。そのぬいぐるみと写真はどうしたんだい? もしかして、乙女趣味にでも目覚めちゃった?」

「ちげぇよ。アーノルド家当主、キンドル=アーノルド氏に依頼をされてな。居なくなった娘を見つけてくれ、ってさ。で、見つけた時にはこのぬいぐるみと写真を渡してくれ。そう言われて持ってきたんだよ」

「ふ〜ん、要するに君は、出来もしないことを安請け合いしてしまった訳だ。レイ君って、詐欺にかかりやすいタイプじゃない? 気をつけなよ」

「お前話聞いてたか? だがな、アーノルド氏に預言者を名乗る奴が現れて……」


「と、そんなわけだ」

「にわかには信じがたいけどな……まぁいいや。その写真とぬいぐるみはお宝と一緒に置いておこう。その二つだって、アーノルド氏にとっては『宝物』なんでしょ?」

「……そうだな」


 スカイは部室のロッカーを開け、中から一つの布袋を取り出した。ぬいぐるみと写真立て、そしてピンクダイヤモンドをその中へ仕舞った。布袋のサイズ的には、あのぬいぐるみは入らないはずだが……


「やっぱりすげぇなこれ。『アイテムボックス』の魔法を再現してあるんだよな。なんでその技術をもっと世界へ活かそうと思わないかなー」

「でも、君としてはここに私が居た方が助かるだろ?」

「それはまぁ、確かに」

「君には()()()の恩がある。一生掛けても返しきれないくらいのね。だから、君が私を抱きたい、って言っても私は抵抗しないよ」

「ば、何言ってんだよお前は!」

「ははは」


 腰に手を当てて高笑いするダストと、彼女を恨みがましく見つめるレイ。実はこのやりとり、スカイの格好のまま行われているところがこの話のオチだ。

少しでも面白いと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、感想などよろしくお願いします。

花依は狂喜乱舞します。

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