『ドワーフと製鉄所』
近代化に犠牲はつきものです。
ドワーフ族の金属精錬工房から怒号が響く。
「お前ら、それで良いのか? 俺達は俺達のやり方で最高の鉄を作る。それが流儀だろ? もっと熱くなれよ!」
ドワーフの精錬工房では、日本から製鉄、製鋼機械を導入し、日本式の製鉄所を経営しようとする動きがある。
製造される金属の量では勝負にならない。
かといって質で勝てているかというと、贔屓目に見て互角といったところ。
大量生産される日本製の価格を考慮すれば、同等の品質なら日本製の方が安い。
ドワーフの精錬工房は日本で言う中小企業ばかり。
廃業するか、合併集約して日本式に転換するかという苦渋の決断を強いられる。
金属加工業では先が暗いと、酒造メーカーに鞍替えしたドワーフも居る。
金属加工が民族の伝統文化でもあるドワーフに、近代化の波は容赦なく押し寄せていた。