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呪刻印の転生冒険者 ~最強賢者、自由に生きる~  作者: すみもりさい
第四章:王都への小旅行は楽しい

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敵の仲間を見つけた


 お昼を食べて、また買い物にでかけた。

 あちこち回ることしばらく、ようやく『彼』が動き出した。ここに至るまであれこれ僕をせっついていたのだけど、さすがに不審に思ったのか、彼が僕と会話できる範囲から外れたのだ。


 魔界の住人――魔界族のビム。

 僕をレイラのような人造人間ホムンクルスと誤解して操ろうとした男だ。そして各地で魔界門を開け、何かしでかそうとしている。


 彼は僕を認識できない範囲に移動したけど、僕は彼に『遠見魔法クレアボヤンス』の起点術式を付与したので、こちらからは丸見えだ。


 シャーリィや道行く人たちには気づかれないよう、僕にしか見えない半透明のウィンドウを虚空に現す。


 ビムは角と尻尾を消し、肌の色も人族のそれに変じて人に成りすまし、箱馬車に乗った。

 しばらく王都の中心部から離れる方向に進み、大きな古い邸宅の前で止まる。


 彼の自宅かと思ったけど、守衛さんが『いらっしゃいませ』と首を垂れていたから、どうやら別の人物の邸宅らしい。


 ちょっと期待しながら見守っていると、彼は建物に入るや無遠慮にずかずか奥へと進み、ノックもせずに扉を乱暴に開け放った。


 広い部屋に家具はほとんどない。

 中央にひとつロッキングチェアがあり、そこで揺られる若い女性が本を読んでいるだけだ。


「おい! グレモリ! いったいどういうことだ!?」


 彼の呼びかけた名は、以前にも彼自身が口にしたものだ。早速、彼の仲間にたどり着けたな。


「どういうことだ、とはどういうことなのかしら?」


 艶めかしい声の女性は灰色の長い髪を床にまで垂らし、真っ黒のぴっちりしたドレスをまとっている。

 ビムには目もくれず、静かにページをめくっていた。


「貴様のホムンクルスを使役する術式だ。まったく命令を聞きはしないではないか!」


「へぇ? 一見しただけで使えてしまったの。さすがは第二冠位をも扱える実力の持ち主ねぇ。でも失敗したのは貴方の責任ではなくて?」


「私の魔法行使は完璧だった。貴様の術式に瑕疵があったに違いない!」


 グレモリはふぅとため息を吐き出しつつ、ページからは目を離さずにこぼす。


「状況を教えてくれないと、なにもわからないわぁ」


「いいだろう。まず対象のホムンクルスだが――」


 ビムがこんこんと説明する間も、グレモリは彼を一瞥すらしなかった。


「ふぅん、そう。だいたいわかったわ。ううん、わからないことのほうが多いのだけれど、やっぱり貴方が悪いってだけは、ね」


「なんだと!?」


「貴方が使役魔法をかけた相手はただの人形。魂が入っていなければ、あの術式は正しく起動しないの」


「人形……? しかしその後、アレはたしかに動いて――」


「誰かが動かしていたのでしょうね。命令を受け付けないのも当然だわ。ビム、貴方は踊らされていたのよ。そしてまんまと仲間わたしのところへ導いてしまった。本当、滑稽な男ねぇ」


 ぱたんと本を閉じ、初めてその瞳をビムへと向けた、直後。


「ごあぁああぁああぁああああ!?」


 ビムの体躯が黒炎に包まれる。


「な、なぜぇ!? なにをぉおおおおぉおお燃えるぅうううるるぅるぅ……」


「本当におバカな男ね。私よりも強いのに、私の下にいた理由はそこなのよ? せめてもうすこし思慮が足りているのなら、こんな無様は晒さなかったでしょうにねぇ」


 グレモリはくすくすと笑う。

 たしかにこの黒炎は、第三冠位に相当するものだ。ビムなら不意をつかれていても防げていたはず。


 けれど今まさに彼が燃え盛っているのは、あらかじめ彼の中核に術式が刻まれていたからだ。

 体の内側から術式を起動させられては、ビムに防ぐ手立てはなかった。

 この黒炎、僕が彼に付与した術式まで燃やされちゃうな。


「ねえ、見ていて? 聞いてもいるかしら? おそらくビムが言っていた、黒髪の男の子が貴方でしょう? 大方セイバルが放ったお仲間でしょうけれど、私はそこで燃えている無能ほど優しくはないわ。せいぜい楽しませてちょうだいねぇ」


 グレモリはロッキングチェアから立ち上がると、燃え盛るビムへと近寄っていく。

 彼女がたどり着く前に、ビムは僕が付与した術式ごと燃え尽きた。


「あはははははっ! ようやくこの能無しから解放されたわ! けれど私の姿を見られたのは失態ね。計画の前倒しが必要かしら? 万が一でも失敗すれば、次は私が燃やされるもの」


 うん、このひともビムと同じでぺらぺらしゃべってくれるタイプか。助かるな。

 ビムに付与した術式は消えたけど、場所がわかっていればクレアボヤンスの起点は置けるんだよね。

 だからすぐさま切り替えて、今も彼女を監視している。


 そして彼女の言葉から、どうやら彼女の上にも誰かがいるらしい。

 というわけで、今度は彼女に泳いでもらおう。


 僕はこっそりクレアボヤンスの起点を彼女の髪に貼りつけた。


「ここは引き払うしかないわねぇ。けっこう気に入っていたのに、残念だわ」


 肩を落とす彼女の監視は続けるにしても、今すぐやることができてしまった。


 意識をこちらへ。

 僕は大通りに飛び出して、いくつもの魔法陣を展開した――。


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