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呪刻印の転生冒険者 ~最強賢者、自由に生きる~  作者: すみもりさい
第三章:自由な冒険者生活を満喫する
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調査を開始した


 僕が生まれたアレスター領で魔物が頻繁に現れているらしい。

 その調査をするため、マルコ兄さんに頼んでレイナークの冒険者ギルドに依頼をするようお願いした。

 

 僕は依頼を受けるにあたり正体を隠す必要がある。

 冒険者パーティーに依頼を受けてもらい、僕はその中に潜りこませてもらうのだ。

 

 以前ブルモンさんたちを護衛してアレスター領へ赴いた冒険者パーティーに声をかけた。

 事情をはっきりとは語れなかったのだけど、パーティーのリーダーさんはいろいろ汲み取ってくれ、快諾してくれた。

 

 そうして僕は、再び故郷へ舞い戻った――。




 調査隊は冒険者が十名。

 アレスター領内の街道の脇に、僕たちは集められる。


 対応する兵士たちは五人で、僕とは面識がないのだけど……。


「我らはアレスター家、エリザベータ様の護衛隊である」


 マルコ兄さんの直轄部隊じゃないらしい。というか姉さんの配下かあ。これ大丈夫かな?


 冒険者チームのリーダーの人――名前をルッツさん――が隊長らしき兵士に依頼票を提示し、メンバーを一人一人紹介する。


魔物使い(テイマー)だと? しかも子どもじゃないか」


 兵士さんが僕と、僕の頭の上に乗るファルやそこらをぴょんぴょん跳ね回っているタマ、僕の後ろに佇むアウラを見て、不信感を露わにする。


「彼は幼いが優秀なテイマーだ。プレートを見てもらえばわかるが、Bランクだよ」


 今回の急造パーティーでBランクは僕だけ。

 隊長さんはふんっと鼻で笑った。


「こんな子どもがBランクだと? 最近の冒険者ギルドは程度が低くなったもんだな」


 他の兵士さんたちもゲラゲラ笑う。

 リーダーさんだけでなく、パーティーのみんなは当然むっとした。


「なに、俺たちは金さえ払ってもらえれば文句はない。とはいえ邪魔されるのは迷惑だ。あんたらは俺たちの仕事が終わるまで、ここでぼけーっと突っ立っていてくれ」


「なんだと!?」


「おっと、わからなかったか? 付いてこられても足を引っ張られるのがオチってことさ。ま、お守り代を追加で請求していいなら、構わないがね」


「ぬぅ、冒険者ごときが、貴族の正規兵に対して無礼だぞ!」


 色めき立つ兵士たち。自分たちで煽っておいて、煽り返されたらキレちゃうとは。堪え性のない人たちだなあ。


「いや失礼。冒険者おれたちの間じゃあ、軽い冗談の範疇だったんだが……気を悪くしたなら謝ろう」


 ルッツさんは飄々と受け流す。


「ぐ、ぬぬぅ……まったく育ちの悪い連中だ。ならさっさと仕事にかかれ!」


「ああ、報酬分の働きはさせてもらうよ。旦那方はそこでどっしり構えて待っててくれよな」


 ルッツさんが合図すると、僕たちは兵士たちから離れて街道の反対側へ移動する。

 途中、僕はルッツさんに近寄って声をかけた。


「ありがとうございます。彼らの注意を僕から逸らしてくれたんですよね?」


「君は察しがいいな。ま、彼らは君と面識がなかったみたいだけど、変に勘繰られて上に報告されたら困るんだろ?」


「ええ、まあ……。すみません、詳しく話せなくて」


「気にするな。冒険者は人に言えないような事情を抱えている者が多いからな。詮索しないのも俺たちなりのマナーってやつさ」


 ああ、こういうところだよ。冒険者になってよかったって思うのは。

 でもこの後の展開を考えると、ちょっと申し訳ないな。僕、兵士たちの前でちょっと目立たなくちゃいけないし。


 地面にメンバーの誰かが大きな紙を広げた。この周辺の地図だ。いくつか『×』印が書いてある。


「ほぼ街道に偏ってるな」

「そりゃあ発見ポイントならそうなるぜ」

「どこから来たかなんて、これではわからないわね」


 魔物が出現した位置を特定するのは、たしかにこれだけじゃ難しいな。


「だが目立った特徴も見て取れる」とルッツさん。


「二十匹ほどのゴブリンの群れ以外は、みな単体だ」


「ゴブリンどもは近場に棲んでた奴らだとして……」

「サイクロプスがなんでこんな森ん中に?」

「領内から外れてるが、巨大ドラゴンまでいたんだろ?」

「最近だとストーンゴーレムね。ずっと東の岩場に棲息してはいるけど……」

「迷うにしたって森を突っ切ってここまで来るか?」


 みんな首を捻る中、弓使いの女の人が言った。


「状況からして、ダンジョンに通じる穴でも開いたんじゃないかな?」


 多くが真剣な面持ちでうなずいた。

 事前に冒険者ギルドの資料室で調べた限り、彼らがそう考えたのは自然だ。


 僕が転生する前――二百年前でもダンジョンの存在は謎に包まれていた。

 地下洞窟や古い建造物内で魔物が自然発生しては、そこを棲み処にする。


 けどタネを明かせば実に簡単な話で、そういった場所は地脈なんかの影響もあって『魔界門』が生まれやすかったに過ぎない。

 これに気づいた僕は論文を書いて魔法学会に送ったんだけど、あれどうなったのかな?

 転生するちょっと前だったからわからないんだよね。


 まあ、二百年経っても魔界門の存在は知られてないし、ダンジョンでの自然発生も経験則的な知識でしかないから、『低級刻印』の大発生の混乱でうやむやになっちゃったのかも。


「ドラゴンだけは別要因があると考えられるが、それ以外は新しくできたダンジョンから這い出てきたのだろうよ」


「でも最近、この辺りで山崩れやなんかがあったか?」

「それこそドラゴンが暴れた結果じゃないの?」


 一部で疑問の声が上がったものの、『新たなダンジョンの入り口ができてそこから魔物たちが現れた』という結論で落ち着きそうだ。


 でも違うんだよね。

 この辺りにダンジョンはないし、新しく入り口が生まれてもいなかった。


 僕が遠隔で調べたように、いまだにそこかしこで小さな魔界門が生まれては、魔物がそこから出てきていたのだ。

 誰かが、意図的にやっているのは間違いない。


「ん? クリス、どうかしたのか?」


 兵士たちがたむろするところを眺めていた僕を、リーダーのルッツさんが不審に思ったらしい。

 そのときだ。


「クエッ!」

「にゃにゃにゃ!」


 ファルとタマが色めき立つ。

 街道の反対側、アレスター家の兵士たちへ飛びかかった。


「ん? ぬぉ!? 魔物どもがこっちへ来るぅ!?」


 兵士たちが身構える。


「クエェ!」

「にゃにゃーんっ!」


 おかげで注意があの子たちに向いた、次の瞬間。


 彼らの背後、木々の中からひとつの影が飛び出した。


 ゴンッ、と鈍い音。


 僕がこっそり生み出した魔法陣に、その影が衝突した音だ。


「な、ななななんだ!? これは……」


 兵士隊長が振り返って目を丸くする。


 びちびちと茂みの側で跳ね回るそれは、大きな魚だった。鋭い牙をガチガチ鳴らし、大きな三角形の背びれを持つ。

 冒険者のみなさんもまた目を丸くした。


「あれってファング・シャークじゃないか?」

「海の魔物が、なんでこんな森の中に……?」


 答えは簡単。

 茂みの向こうに魔界門が開き、そこから獲物の匂いを嗅ぎつけて飛び出してきたのだ。


「どうやらダンジョンとは違う、魔物の出現ポイントがあるみたいですね」


 さて、ここからは僕の出番だ。

 この場にいる人たちにはいろいろ知ってもらわなくちゃいけない。

 そのために、わざわざ海の魔物に来て(・・)もらった(・・・・)のだから――。




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