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呪刻印の転生冒険者 ~最強賢者、自由に生きる~  作者: すみもりさい
第三章:自由な冒険者生活を満喫する

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Sランクモンスターに襲われた


 Bランクの等級審査当日。

 冒険者ギルドのロビーで審査担当官のゲイズさんと合流――しようとしたところ。


「クリス、がんばってくださいね。わたくしも陰ながら応援しています」


 レイラがぎゅっと僕の手を握ってきた。顔が近いよ。


「しかしBランク、ですか。貴方の実力なら余裕のよっちゃんですけれど、コレお姉ちゃん的にはどうなんでしょう?」


 彼女の豊満な胸元には銀製のプレートが揺れている。

 いや『どうなんでしょう?』と訊かれても。


「姉たるもの、常に目標となる存在でなければなりません。実力的にはゴニョゴニョですけれど、やはり先んじて追いかけ回される夢のある期間はなるべく長くを希望します」


 なんだか妙な言い回しだなあ。


「というわけで、わたくしもうかうかしていられません。早速王都へ赴きAランクをゲットしてまいりましょう。ええ、そうしましょう!」


 僕の手をぎゅっと握ったまま叫ぶ。

 朝の依頼争奪戦でごった返す受付ロビーが騒然とする中、レイラは何かを待つように僕をちらちら、手をにぎにぎ。


「えっと……がんばってね、レイラお姉ちゃん」


「ッ!? はい! お姉ちゃんはがんばります!」


 天にも昇る勢いで浮かれまくるレイラはぴゅーっとギルドを飛び出した。

 これ、ブルモンさんの家でやってほしかったな。てか絶対ここでやるのを狙ってたよね。


「Aランクはそう簡単でもないのだが……あの女ならさらりとやりかねんなあ」


 呆れたようにつるりとした頭をかきながら現れたのはゲイズさんだ。


「おはようございます」


「ああ、今日はよろしく頼む。さて早速だが、今回の等級審査の内容はこれだ」


 一枚の紙――依頼票を僕に差し出した。受け取って読む。


「……『光洞花』の採取、ですか」


 とても珍しい植物で、暗い洞窟の奥深くにひっそりと花を咲かせる。陽の光に当てると詰み取った後でもすぐ枯れてしまうので扱いも難しい。

 ただ素材としては一級品で、治癒や魔力回復の特上薬が作れるものだ。


「貴様に魔物討伐をさせるのも面白味に欠けるからな。とはいえ魔物の生息域だ。結局は何かしらと戦うことにはなろうがな」


 目的が植物の採取ならあえて戦う必要もない。きちんと索敵して魔物を避けて進めばなんとかなるかな。

 探し物は得意だし、むしろ楽な依頼と言えた。油断は禁物だけど。

 

「深い洞窟の探索になる。いちおう昼まで準備する時間はあるが、どうする?」


「松明かランタンだけ買って向かいます」


 ゲイズさんはうむとうなずいて、買い物から同行してくれるそうだ。




 必要な物を買いそろえ、街を出た。

 馬車に乗って北西の丘陵地帯へとやってくる。

 深い森の中、坂道をてくてく登った。


「クェ~……」


「おい、ファルから覇気が感じられんぞ?」


 うん、かなり眠そうだ。飛びながらじゃなく、最近は僕の頭の上がお気に入りなのか乗っかってうつらうつらしている。


「今回は彼女にがんばってもらいますから」


 先頭を歩くのは人型になったアルラウネのアウラだ。

 彼女にはゲイズさんに知られないよう、僕から指示を出している。


「あ、こっちですね」


 僕は自身で周囲を監視しつつ、アウラに道案内をさせているように装って魔物に出くわさない道を選ぶ。

 目的の光洞花が咲く洞窟は木々に埋もれた丘の中腹だ。


 地面が削れてちょっとした崖になっているところにぽっかり洞窟が暗い口を開けていた。


 松明に火を灯し、洞窟の中へ。

 洞窟は下に降りていく構造で、いくつも分岐があってかなり広い。でも全方位監視ゴッド・ビジョンで目的の花の場所はわかっているし、魔物もやり過ごせる。

 実は松明もいらなかったんだけどね。


「ありましたね」


 暗い道の向こうで、ほんのり光がにじんでいる。

 駆け寄ると、五つの花びらがラッパみたいに開く青白い花が咲いていた。花弁が光を放つこれこそ光洞花だ。


 根元から慎重に詰んで黒い布袋に入れた。それを腰のポーチに丁寧に収める。

 

「なんとも呆気ないな。まあ、魔物を避けて進むのも迷わず花まで到達できたのも、貴様のテイマーとしての実力があってこそではあろうがな」


 ファルは完全に熟睡モードなんだけど、アウラがその代わりに役割をこなしたと思ってくれたみたいだ。


 帰り道も魔物には遭遇せず、難なく洞窟の入り口まで戻ってきた。

 ゲイズさんは拍子抜けしたようにこぼす。

 

「ここまで見事に魔物と出くわさんとなれば、真に貴様の実力だと――」


「伏せてください」


 僕は言いながらゲイズさんの頭を押さえた。失礼とは思いつつ緊急事態なので。


 ビュン、と。

 さっきまでゲイズさんの頭があったところをボール状のものが高速で駆け抜けた。


「な、なんだ!?」


 手をどけるとゲイズさんが跳ねるように振り返る。


 洞窟横の大岩に、丸くてふわもこな生物が乗っていた。

 まんまるな大きな顔に見えるけど、アレが体であり顔だ。ぴこんと生える耳と短い脚、そして長くて細い尻尾まですべて、灰色と黒の虎柄だった。


「マーブル・タイガーだと!? 巨大種はランクSに迫る魔物がどうしてこんなところ、に……?」


 そう、マーブル・タイガーは十メートルを超す巨大種ならかなり手ごわい相手なのだけど――。


「にゃーっ!」


 威嚇の鳴き声も愛らしいあの個体は体高が五十センチ程度だ。


「なんだ幼体――子どもじゃないか。しかし親がどこかにいるかもしれん。十分に気をつけろよ」


 ゲイズさんが辺りを警戒する。たしかに幼体ならゲイズさんでも力押しでどうにかなる相手ではある。



 ――アレが本当にマーブル・タイガーの幼体なら、ね。



「ゲイズさん、下がっていてください」


 僕は彼を庇うように前に出た。

 ファルものんびりした雰囲気を消し去り、警戒心を最大まで高めて僕の側にぴっとり寄り添う。

 アウラは僕の指示を待っているのか、困ったようにちらちらこっちを見ていた。


「あれはマーブル・タイガーじゃありません」


 ゴッド・ビジョンの範囲をそう広げていなかったとはいえ、僕の索敵範囲外から一瞬にして飛びこんできたあの魔物は――。


「正確には、イビル・マーブル・タイガーです」


 愛らしい姿に惑わされてはいけない。

 本来は魔界に棲み、その力は巨大ドラゴン種にも匹敵するのだから――。






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― 新着の感想 ―
[一言] 余裕のよっちゃんって・・・・・。 年齢がバレますね。
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