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呪刻印の転生冒険者 ~最強賢者、自由に生きる~  作者: すみもりさい
第三章:自由な冒険者生活を満喫する
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強そうな魔物がいた


 僕たちはレイナークの北、ウォルダム家が統治する領地の手前の森に向かっている。

 ネズミ型の魔物の尻尾を回収する素材集めクエストをこなすためだ。


 先行するのはレイラ。びゅんびゅんと荒野を駆けていく。

 対する僕は頭が重い。ファルが乗っかっているからだ。まあ今のスピードなら落っことしはしないけど。


 と、レイラがずびゅんと僕の真横にやってきて並走した。


「ただ走るだけでは味気ないですね。お姉ちゃんとお話でもしましょうか」


 いきなり話と言われても……あ、そういえば。


「気になることがあるって言ってたよね?」


「以前、クエスト中に『魔界門』を発見しました」


 なんだか大事な予感。

 ここではないどこか。とてつもない化け物たちが跋扈する世界は『魔界』と呼ばれ、ときどきこちらの世界と『穴』でつながることがある。その穴が『魔界門』だ。


「できてすぐに消滅するほど小さな穴でした。しかしそれを二度、今回向かう場所の近くで目撃しております」


 魔界門はそうそうお目にかかれるものではない。偶然見つけることはないと言いきれないけど、二度も、それも短い間隔だとすれば異常を疑ってしまう。


 僕はつい先日、魔界からの招かざる来訪者を退治したところだ。

 悪魔の目(デーモン・アイ)クラスの魔物が通れるほどの穴が開けば、面倒な事態になるだろうね。


「なるほど。それで僕の協力が必要なんだね」


 ディープ・アナライズなら、痕跡から発生原因を特定できる。たぶん。

 たんにその辺りの時空が不安定になってると思いたいけど、誰かが意図的にこじ開けようとしているなら事態は切迫している。


 もし先にどこかの冒険者パーティーが同じ依頼を受けてそこにいて、大きな穴が開いていたとしたら。


「杞憂であってほしいけど、念のため急いだほうがいいね」


 僕たちはスピードを上げた――。




 草原を越え、川を渡ったところは岩場になっていた。そろそろ目的の場所だ。


 僕はゴッド・ビジョンを限界まで広げた。


「準備しますので少々お待ちを」


 岩場の手前でレイラが魔力を高めた。風が渦を生し、彼女のすぐ横に魔法陣が浮かび上がる。そこから鋭い切っ先が現れた。

 

 第三冠位魔法『武装具現化』。自身がイメージした武具を創造できる魔法だ。

 

 切っ先からはどんどん幅が広くなり、縦長な三角形の刃が姿を現す。柄が出てきたところでレイラはそれをつかみ、ぐいっと引っ張った。

 逆方向にも似たような三角形の刃。ただ先端部分が尖っていなくてやや丸みを帯びている。

 

 焼灼双頭槍『タエアロス』――双頭槍ツインランサーと呼ぶには握り部分以外が大きな刀身になっていて歪な形だった。

 

 ちなみにあれは本物オリジナルだ。

 収納魔法と違って武装具現化魔法に取りこまれるのでレイラ自身に紐づけられ、特殊効果を低魔力で使えるし血の通った手足のごとく扱えるメリットがある。

 反面、他者は使えなくなり、彼女が死ねば本物は永遠に失われるデメリットがあった。他にもいくつか制約があり、僕は武装具現化に武具を取りこむことはしない。


 これ、僕が前世で彼女に贈ったものなんだよね。まだ愛用してくれているのは嬉しい。


「では参りましょうか」


 槍をくるくる回すと土埃が舞った。

 彼女の流麗な動きを眺めつつ、僕は眉をひそめる。

 

「……なんだこれ?」


 ゴッド・ビジョンで妙な景色を捉えたのだ。

 

 そこらにネズミ型の魔物がぴょんぴょん飛び回っている。腰丈ほどの大きさで、硬く長い尻尾が特徴だ。『ウィップ・ラット』と呼ばれ、今回の依頼はその尻尾をいくつか回収することだった。


 目標はたくさんいる。

 ただそれ以外(・・・・)も存在した。


 人だ。見たことがある。

 冒険者ギルドで初回の等級審査を一緒に受けた三人だった。


 おかしいな。この依頼はDランク。Fランクの彼らでは受けられないはずなのに。

 理由は知れないけど、間が悪いにも程がある。


 槍使いの青年と魔法使いの少女が、震えながら見つめる先。剣士の少年が長い蔓に囚われていた。


「なんでこんなところに『アルラウネ』がいるんだ?」


 巨大な植物系魔物。

 太い幹には枝ではなく棘のある長い蔓がたくさん伸びていてうねうねしている。幹の上部には大きな蕾が。その上には緑色をした女性の上半身が乗っていた。

 

 アルラウネは本来、森の奥深くに住む。

 そして植物系でありながら食性は肉食――食獣・・植物種の魔物だった。


 剣士の少年だけでなく、長い蔓のひとつが大きな獲物に巻きついていた。


「フゴッ、ブフゥゥッ!」


 巨大猪のアサルト・ボアーだ。蔓がゆっくり持ち上がる。巨大猪は脱出しようともがくも逃げられず、蕾へと運ばれていった。


 蕾が開く。

 それは花と呼べなくもないけど、ふさわしいのは『巨大な口』だった。無数に生えた鋭い歯から唾液が滴り、分厚く真っ赤な舌でじゅるりと舌なめずりする。


 暴れるアサルト・ボアーは為す術なく、ぼきりぼきりと喰われていった。


 それを眺める、駆け出し冒険者の三人。

 たいして腹の足しにはならないだろうけど、次に狙われるのは彼らだ。

 

「急ごう」


 僕はレイラの返事を待たず、ファルを抱えて最高速で飛んだ――。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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