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呪刻印の転生冒険者 ~最強賢者、自由に生きる~  作者: すみもりさい
序章:最強賢者は伝説を作り――未来へ転生する
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最強賢者は転生する


 俺は人里離れた山奥へ飛んできた。

 深い森の奥深く。大滝のすぐ下にある湖のほとりに大きな館がひっそりと佇んでいた。

 

 俺の隠れ家だ。

 

 幾重にも施された結界を抜け、館の入り口を開けると。

 

「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」


 大勢の執事やメイドたちが出迎えた。

 そのうちの一人、初老ながら体格のよい執事長が俺の斜め前に進み出る。

 

「すぐにお食事をご用意いたします。湯殿の準備はできておりますが、お先にいかがでしょうか?」


「そうだな。まずはくつろがせてもらうか」


「畏まりました」


 執事長は深々と礼をしたのち、顔を上げて周囲に目配せする。すぐさま動きだす面々。数名のメイドが俺に寄ってきた。

 

「ご主人様、湯浴みはわたくしたちがお世話させていただきます」


 清涼とした声音は褐色のエルフからだ。背が高くメガネをかけた彼女はどこか恍惚としている。


「ん? ああ、頼む……が、お前はどうしてメイド服を着ている?」


 彼女は本来メイドではなく、執事長と同じく最古参の一人で俺の参謀的な位置づけだ。


「ときに新鮮な雰囲気で主を迎えるのもよいかと思いまして」


 なぜ頬を赤らめる?

 どうにもこいつらの一部は、主従感情が恋愛感情にすり替わっている節があった。そんな設定(・・・・・)にした覚えはないのだがな。

 

 この館にいる者たちはみな、俺が作った人造人間だ。

 彼らはけっして俺を裏切らない。ゆえに俺も彼らに全幅の信頼を寄せ、必要なら彼らの心情に沿った行動を取る。

 

 風呂になんて一人で入れるのだが、拒むと心底残念そうにするのでね。

 

 湯殿は滝を臨める露天風呂だ。俺たち以外は誰も近づかない場所なので安心できた。

 仮に侵入者が近づいたとしても執事やメイドたちが撃退する。彼らの強さはまちまちだが、中には魔王に匹敵するか超える者もいるのだ。むろん俺には及ばないし、俺に敵対する心配もないが。

 

 甲斐甲斐しく俺の体を洗うメイドたちは、これみよがしに胸を押しつけ脚を絡めてくる。

 主人に対して逆に失礼では?と思うも、俺が咎めないので問題ないと思っているらしい。

 俺は膨大な魔力と引き換えに性欲がまったくなくなってしまったのだが、彼女たちが嬉しそうなので特に何も言わなかった。

 

 たいして疲れてはいないがゆっくりと湯を楽しみ、宮廷料理が霞むほどの豪華な食事を終え、俺はみなを広間に集めた。

 

 執事にメイド、コックや庭師。

 いずれも特殊な事情から非業の死を遂げ、俺が再び命を与えたいわば我が子同然の者たちだ。

 生前の記憶はないはずだが肉体に宿った個性がにじみ出ているのか、性格は多種多様。ふだんはこの館に寄り付かない俺だが、やはり転生するにあたり気がかりなのは彼らの行く末だ。

 

 長命どころかメンテナンスさえしておけば半永久的に生き続ける彼ら。

 

 俺は転生する旨を伝えたのち、

 

「自由に生きろ」


 それだけを告げた。

 反論はもちろん、質問も飛んでこない。みな一様に首を垂れ、『ご主人様の御下命なれば』と異口同音に返した。こういうところはきっちりしているな。

 

 後顧の憂いがなくはないが、彼らなら元の種族の社会で上手く立ち回るだろう。

 もしかしたら転生した未来で再会できるかもしれないな。そのときを楽しみに――。

 

 

 

 俺は一人で地下の研究室にこもった。

 転生魔法を行使する前にやるべきことがある。

 

 鏡に自身の顔を映す。

 左目に魔力を集め、抑止の魔眼を発動する。一回では足りない。もう一度。

 

 最初は右手の甲に柔らかな痛み。

 次は左手の甲に同じ痛みが。

 

 見れば、左右に違った形の抑止の呪印が刻まれていた。それぞれ四画。

 

「これでも完全に抑えられはしないか」


 当然だ。俺は自らの体も作り変え、神にも迫る魔力を獲得したのだから。たぶん。だって神なんて見たことないし。すくなくとも召喚した天使よりかはあった。

 

 もっとも完全に魔力が封じられれば転生魔法が実行できない。許容範囲と考えよう。

 

 自ら魔力を抑えたのには理由がある。

 転生した赤子が膨大な魔力を持っていたらいろいろややこしいことになる。それを回避するためだ。それでも普通よりずっと魔力が強いので不安もあるが……祈ろう。

 

 続けて右目に魔力を集めた。

 瞳が金色を帯びてきて、左目とは別の紋様が浮かび上がった。

 こちらは『解呪の聖眼』。抑止の呪印を段階的に解除できる。転生前の記憶を取り戻したらこれで抑止の呪印を解いて通常に戻るのだ。

 

 転生して赤子のまま意識を保持してのんびり成長しようとは思っていない。

 最初は今の記憶を封じておき、ある程度成長したら封を解く算段だ。

 だいたい十二歳くらいなら貧しい民は働きに出るし、貴い家柄なら寄宿舎のある学校にでも入る年ごろだ。未来で風俗や習慣が異なるにしても、数年を準備期間と考えれば妥当なところかな。

 

 次は時代の設定だ。

 あまりに未来では世界の様相が変わり過ぎている懸念がある。それはそれで面白いが不測の事態はなるべく避けたい。

 かといって数十年後では人魔の争いにまた巻きこまれる可能性があった。

 

 二百年くらいでいいか。

 

 大雑把に決めたところで事前準備は終わり。

 

 俺は魔力を高めて詠唱を始めた。

 抑止の呪印のせいでやりにくいが失敗する愚は犯さない。床に円形魔法陣が浮かび上がり輝いた。光の奔流に俺は飲みこまれていく。

 

 次こそは穏やかで安らかな人生が送れますように。

 

 そう願いながら、俺は転生した――。


序章はこれにて幕となります。

次回からはいよいよ転生しての新たな生活のスタートです!


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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『続きが気になる』

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