第八話 知性
満月が見守る中、ドンの村にある小高い山の頂上では様々なことが起こり、温泉が出た。今その頂上では純白のドラゴンと村人たち全員が集まって会話をしている。純白のドラゴンは立ち位置を直し変えて話を続けた。
『先刻の者はこの地を治める“大地の精霊”。彼の者と契約し、我が心に知性が宿った。これ以上は彼の者との約束ではないが、勇者よ、満月の夜にはハンマーを打ち鳴らして悦ばせてやって欲しい』
コナン「ああ、喜んでやろう。とても美しい音色だった」
それは、そのハンマーを鳴らした勇者にしか聴けない音色である。
『クラリス』
クラリス「は、はいっ」
『リサ』
リサ「うん!」
『あのときは助かった。何か礼をしたい』
クラリス「お礼なんて、そんな! あんなのいつも皆にやっていることですから…………」
『…………。』
リサ「ねぇ、私は使役者になりたいの。あなたのマスターになれる?」
『それは出来ぬ』
リサ「そう…………。」
『だが、友にはなれる。リサ、あれ以来お前の愛を忘れたことは無い』
リサ「友達ね!? そのほうがズッといいわ!」
『この村の長よ』
ドン「はっ、はいっ!」
『貴様にも礼をすべきと考えているが、願いはあるか?』
ドン「むむむ、せっかくドラゴンに叶えてもらえるならもっとじっくり考えてからのほうが…………」
『ふっ、小賢しいやつだが豪胆でもあるな。よかろう、貸しを作っておく』
ドン「なんと! それは……実に話のわかる方だ」
村人「な、なぁドン。話も終わったんならおれたち帰ってもいいかな? 色々起きたから疲れちゃって。ドラゴンを前にして勝手に帰るのもなんだしさ」
ドン「そっ、そうだな。ドラゴン殿! 失礼だが村人を村に帰らせてやりたい。明日からまたこの温泉の整備もしなおさないといけないので、その、そろそろ寝ないと」
『構わぬ。森の民は我が恩人だ。ゆっくりと休まれよ』
村人たちはそれを聞いて立ち上がり、ぞろぞろと帰って行った。不思議なことに、帰りの足取りはやけに軽かった。明日は温泉に入ってみようなどと言いながら、彼らは山を下っていった。
『私も長いこと飛び続けて疲れた。今夜はここで眠るとしよう。クラリス、リサ、また明日話したいことがある。来てくれるか?』
リサ「友達だもん! もちろん来るわ!」
クラリス「ドラゴンのほうから話があるだなんて、名誉ですわ。必ず参ります」
彼に手を振って、今日のところはみんな帰って行った。実に不思議な一日だったが、同時に伝説となる日だった。以来、ドンの村ではこの日を村の祭日として扱っている。
──翌日。
村の地形はずいぶんと様変わりしていた。それもこれも昨日の地震と温泉が出たせいだ。一部の建物は崩壊し、村人の何人かはしばらく遺跡や親しい友人の家で寝泊りすることになった。
遺跡の内部にも大きな変化が起きていた。湧き出た温泉が特別な水路を伝って、遺跡のいたるところを巡るようになった。大地の精霊のはずだが、水の遺跡と呼ぶに相応しい様相となっていた。
ゴーレムたちも変わらないが今までより大きくなった者が増え、流れる温泉の水路を辿って歩くようになっていた。主に山の麓から山頂にかけて、ズリズリゴロゴロいいながら登っていく風景はドンの村の名物にもなった。このゴーレムが通る道筋に建物は建てないことという村長命令までできあがったほどだ。
それから、毎月の満月の夜には村人が集まって小さな儀式を執り行うようになった。勇者と呼ばれたコナンがただ魔法のハンマーで地面を叩くだけなのだが、どうやら彼以外でも鳴らすことができるとわかると、みんなこぞってハンマーを鳴らすようになった。この儀式もまたドンの村の名物へとすり替わっていく。
▼まとめ
・恐怖の1分で農作物は全滅していた。
・地震のせいで家がいくつか壊れた。
・古代の遺跡は、水の遺跡になった。
・ゴーレムがまた徘徊を始めた。
・ゴーレムの種類・大きさが増えた。
・ゴーレムの巡回路を邪魔しないという命令ができた。
・満月の夜に魔法のハンマーを打ち鳴らす儀式をするようになった。
・魔法のハンマーは、肉体と精神の強い者なら打ち鳴らせることがわかった。
・村長ドンは、ドラゴンに貸しを作った。
温泉が出たのは良かったものの、結局は被害が大きくて現状はマイナスな状態。村長ドンは、今後どうやって村の復興と温泉施設を作っていくかという点に頭を悩ませるようになる。




