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魔物の襲来と無二の友

前回の更新を途中で投稿してしまったため書き直しました。

見てくださった方には申し訳ありませんがもう一度確認をお願い致しますm(_ _)m

 「どうでしょう、楽しめましたか英雄さん?」


 そう聞かれ、少し興奮気味に頬を薄く染めながら、える氏は答えた。


 「大満足だよ! いつも見ていた施設の上が見れたのもそうですけど、動物園や植物園を見学した気分だった!」


 「ふふっ、でしたら良かったです。でも施設の外に出れる英雄さんなら、もっと色々な物を見てるんでしょう?」


 そう返され、える氏は言葉を詰まらせる。

 知っていると言えば知っている。だが規制法によりグラフィックの落とされた、まるで霞がかった朧気な景色しか思い出せなかった。

 先程見てきた生命溢れる現実になった農園や畜舎ではなく、プログラムと規制による全く生命を感じない虚無なる光景をNPCは知らないという事に気づく。


 途端に暗い顔になった彼女にムース嬢は失言してしまったと思い、オロオロとしながら励ましの言葉をかける。


 「大丈夫ですよ英雄さん。これから狩りばかりじゃなくて、綺麗なところも探していけば」


 そう言われ、える氏はハッとした顔になり頷く。


 「そうだね、せっかくの異世界転移だ。今まで見た事ないものに溢れてる世界を満喫しないとな!」


 そう言うとムース嬢は困惑した顔になり、える氏が先程言ったことについて質問した。


 「えっと……異世界……ですか? どういう感じか説明してもらっても良いですか?」


 それを聞かれ、える氏はしまったという顔をし、簡単な説明を始める。

 今置かれている状況となぜ気づいたかを少しぼかしながら。


 「あー……。えっと、早く言ったら新天地に気づいたら居たって感じかな? 外を見てみたら分かると思うけど、見たことない植物が生えててさ、それで気づいた感じだよ」


 そう言われムース嬢は、怪訝な顔で近くにあった窓へ歩いて行き外を眺める。

 

 「あら……。本当に見たことないの生えてますね。あと知らない生物……? もいますね」


 「知らない生物? どんなのがいるの?」


 未知の生物とはどんなモノなのかが気になり、える氏も窓の外を見てみる。

 そこには棘に覆われた一つ目の大蛇が這いずり、この拠点目掛けて100数メートルまで迫っていた。


 「なんだ……あいつは」


 太古獣の原始的なフォルムでもなく、幻想獣の様な天輪もなく、機殻獣の鉄の体でもなく、どれにも当てはめられない姿をしている。その姿を言うなれば、進化に失敗した奇形の獣であった。


 「あれは敵なん━」


 ムース嬢は、える氏に聞こうとした言葉を遮られ青く輝くドームに覆われてしまう。このドームは拠点襲撃イベントの時に発生する非戦闘員保護ドームであった。

 そのドームは例えレイドモンスターの必殺技だろうと無効化する。解除するには近くの脅威を排除するか去るまで待つしかない。


 「転移して早々の客が未知の敵とかやってらんねえ!」


 そう毒づきながら棚に置いてあった機甲剣に腕を差し込み装着し、食堂を飛び出し自室へ向い駆け出す。

 拠点入り口の受付にいるシャル嬢もドームに覆われている事を横目で確認し、すぐ左手の大きな扉を開け中に飛び込む。

 部屋の中は無機質な鉄板の壁と床であり、パイプと様々な機械が壁際を埋めつくしていた。まるで何処かのバイオラボのように見え、とても女性の自室とは思えない部屋である。


 える氏はその部屋の中央に鎮座する翼脚龍の姿をした機械に触れる。


 「ピピッ………ギガガ……キュウン。マスター、狩リノ時間カ?」


 その機械は赤色の光をボディに走らせながら起動し、伏せていた姿から起き上がる。その背中には騎乗用であろうシートが付いており、える氏はそのシートに跨り首のつけ根にあるハンドルを掴む。


 「そうだ。未知のモンスターか拠点に襲撃してきた。行くぞジャバウォック!」


 「承知シタ。GOOOOO!!」


 える氏がジャバウォックと呼んだ機殻獣は、騒音の様な雄叫びを上げながら拠点を飛び出す。

 その音を聞きつけたのか、先程の奇妙な棘大蛇が此方に頭を向け、威嚇の声を上げる。


 『Zyaaaaaaaaaaaaaa!!』


 威嚇されると、える氏の視界の端に石化と毒の耐性ゲージが現れた。

 その2つのゲージはじわじわと緑の部分が減っており、このまま戦えば直に行動不能状態へ追い込まれてしまう事を指している。

 咄嗟にジャバウォックから離脱し、える氏はジャバウォックに指示を出しながら駆け出す。


 「めんどくさい……! ジャバウォック、ヘイトとって!」


 「GOOOOOOOO!!」


 ジャバウォックはもう一度吠え、棘大蛇に向かい弧を描くように接近する。

 マスターと呼んだ彼女から棘大蛇の視線を外させる事に成功し、そのまま接近しながら強靭な翼脚で殴りつける。


 もちろん棘大蛇は大人しく殴られるわけも無く、身体をしならせ鞭のように棘で覆われた尻尾で迎撃する。

 ガキンという金属音を響かせ、翼脚は弾かれるもその翼脚に付いた鋭い鉤爪により棘を削り落とす。

 棘の中には綺麗な夕日色の羽毛が詰まっており、千切れた羽毛が幻想的に舞い散る。


 『Zyaaaaaaaaa!』


 棘大蛇が再び威嚇するとまるでコブラのように首元が開き、頭頂部の1列の棘が赤く輝く出した。

 その姿を見て、える氏はゲームの中でいたとある幻想獣を連想した。姿かたちも違い、光輪も無いが特徴の当てはまるメガモンスター。その名は━


 「異世界のバジリスクか! ならば弱点も一緒か!?」


 そう言いながらポーチから赤い小石を取り出し、機甲剣に擦り付ける。

 ゲームではオレンジ色の羽毛に覆われた多脚の蛇竜であり、頭部に赤い鶏冠と鳥の様な嘴がついており、目は2つついていた。

 弱点は目か口内に火属性の攻撃をされる事であり、先程える氏が取り出した小石は武器に属性を塗布するアイテムである。


 ガキンバキンと異世界のバジリスクの棘を削り、ジャバウォックは己の主から受けた命令を堅実に守る。

 既にバジリスクは弱そうな人形生物の事など頭になく、この鉄の小竜を如何にして倒すかしか考えてなかった。


 える氏はそれを見てバジリスクの背後に回り込み、その背中を駆け上がる。バジリスクは自分の体を駆け上がる存在に気づき、振り落とそうと身を捩ろうとするが既に遅く、眼前に突然現れた赤熱した刃でその瞳を切り裂かれ、仰け反るようにして倒れた。


 『Ka……Kaaa………』


 その刃はバジリスクの頭頂部に駆け上がった彼女が逆宙返りで放った一撃であり、その一閃はバジリスクの脳までも切り裂き致命の一撃となった。


 そのままクルクルと回転しながら落下し、着地と同時に前転して勢いを殺す。

 える氏は反撃に備え、盾形態に戻し防御姿勢を取るもバジリスクはピクリともせず、切り裂かれた瞳から色々な内容物を垂れ流すだけであった。



 「………………あれ? ……死ん…でる?」

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