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プロローグ

 メガモンスター バスターズオンライン《 MEGAMONSTER BUSTERSONLINE》、通称《メガバス》と8チャネルで呼ばれる人気VRオンラインゲーム。


 そのゲームは端末化機械眼、又はスマートゴーグルとオールドガジェットと言うアナログ機材を通して遊べ、インターネットが使える国ならばほぼ全ての若者とゲーマーがプレイしている超有名ゲームである。


 そのゲームでは、メガモンスターと呼ばれる古代生物や空想生物はたまた機械兵器が敵として存在し、それ等をバスターズと呼ばれるプレイヤーキャラクター達が10種の武器を駆使して倒し、その素材を使い武具や拠点施設を強化していく。




 そしてゲーム内では戦力・拠点発展度の優秀な5位までのプレイヤーを他プレイヤーへの指標とゲームの宣伝とし、様々なメディアに映像公開している。


 その映像はトップ5のメガモンスター討伐のクエスト風景や、拠点での活動風景を映し。

 その代わりにトップ5は対価として武具のオリジナルデザイン権、拠点NPCの自由変更権など、戦闘や拠点力に直接関係の無い福利サービスを受けれるようになっている。




 そのランキングで、数年間1位を独占してきた《大森林生える》と言うプレイヤーが居た。

 そのプレイヤーは、全てのメガモンスターを機甲剣のみの鮮やかな魅せプレイで倒す、というスタイルで人気を博し、ランキングでは戦力・拠点発展度は他ランカーと数値的な意味で頭が1つ飛び出た桁違いであった。


 いつしかそのプレイヤーは《機甲剣の姫》や《えるちゃんオジ》と呼ばれる様になり、ゲームの運営からトロフィーをゲーム内で渡される事となる。







 そんな彼が、ある日突然ランキングから消え、ゲーム内で一切姿が見られなくなり、不思議に思った有志のプレイヤーが運営に問い合わせる事となる。

 問い合わせた結果、運営も一切把握出来ておらず、《大森林生える》氏の登録情報が突如消失した、という事しか分からなかった。



 その後、様々な騒動が起きつつも《大森林生える》氏が無言引退したのでは? という事に落ち着き、次第にその騒動は皆の記憶から風化していった。









 そしてその騒動の2年後、公式チャネルアーカイブに1つの動画が追加された。

 その動画は2年前に突如消えた《大森林生える》氏の新しい拠点の活動動画であった。



 そこには、一般的なVRゲームでは規制的に表現出来ないリアルな草木。そしてゲームでは良くある、施設やキャラクターへの草木等の貫通が起きておらず、キャラクターの圧倒的な肉感が映し出されていた。






~◆~

 濃い新緑に囲まれた遺跡風の小さな集落、その中心にある広場で鮮やかな桃色の髪の女性が横たわっていた。

 暗殺者風の白と濃い灰色のファンタジー鎧を身にまとい、その近くには銀色の不思議な形のカイトシールドが2枚突き刺さっており、ピョルピョルと鳴く小鳥がその先端に止まっていた。

 

 その盾は手甲と一体型となっており、中央と肘部分には機械的な歯車の意匠が施され、盾の端は鋭利な刃に研ぎ澄まされており、総金属製の巨大な物体はとても倒れている女性の所有物とは思えない。


 だが、彼女の事を知っている人は口を揃えこう言う。『むしろこの武器が無いと彼と言えない』と。

 そう、この倒れている女性が《大森林生える》という男性であった者だ。


 「うぅ~ん……」


 そんな説明をしているうちに彼が、いや彼女が目覚め、ゆっくりと瞼を開けた。


 「ん~~………ん……? あれ……まだゲーム内かな?」


 そう言いながら、陽の光が眩しいのか目に右腕を乗せ、左手の人差し指を宙に彷徨わせる。


 「……………あれぇ? コマンドミスしたかな」


 もう一度二度と指を振ると、異変に気づいたのか腕をどけ左手をじっと見つめながら更にもう一度振る


 「なんでメニューが開けないんだ。 バグ………じゃ無いな」


 不思議そうに左手を突き上げたまま独り言を呟いていると、見た事も無い小鳥が指に止まり、とてもVRゲームでは表現できない指先の圧迫感とフワフワした羽毛を確認する。


 半世紀前の過去に人気であったダイブ型ゲームでは、実物の様なグラフィックと現実世界の様な感覚再現が出来たと聞いている。

 だが脳が電脳世界を現実と誤認し、ゲームに囚われてしまったと錯覚するデスゲームシンドロームや、脳の酷使による痴呆症、はたまたゲームのし過ぎで筋力等が衰え寝たきり状態になる人々が急増した。

 そのため世界協定により〖ネット及び電脳世界共通規制法〗を制定し、それら現実と誤認しうる映像や五感連動機能は廃止され、再現しようとする企業又は個人に莫大な罰金刑を設けた。


 そのため、この様に指先に止まる小鳥の触覚はゲームでは起こるはずもなく、更に羽毛等の細部までは作り込まれない事から、ゲームでは無いという事が分かった。


 「……てか、声可愛すぎ問題だ。ボイチェン要らずのネカマプレイできっぞ」


 そう言いながら腕を下ろし、大の字に体を伸ばす。先程の鳥は手が動いた瞬間飛び立ち、近くの建物に入っていった。

 しばらくぼうっと空を眺めた後、おもむろに立ち上がり、地面に突き刺さる見馴れた自分専用の機甲剣に触れる。


 「冷たいな……。それにやっぱり硬い。デスゲームシンドロームか異世界誘拐のどっちかかな」


 白魚のような指を刃の部分に触れさせ、滲み出る普通の血液とピリリとした痛さを確認し、腰のポーチに手を伸ばす。

 さて、先程彼女が言った異世界誘拐について軽く説明しよう。これは異世界または異星へ、超常的自然現象又は空間転移式拉致誘拐行為の事である。

 次元の(ひず)みによる空間又は時間の跳躍、そして魔力又は超技術による故意的な召喚によって起こる、個人・集団拉致被害であり太古より神隠し等と呼ばれ問題視される現象である。


 そんな事を説明しているうちに、彼女はポーチから緑色の錠剤を取り出し、それを口に含んだ。


 「くっそ甘苦い……。お菓子としては期待出来ねえ」


 その可愛らしい顔を歪ませ、ボリボリと錠剤を噛み砕く、すると指先の切傷は癒え、元の傷一つ無い綺麗な肌を眺める。

 だが、ゲームの様に滲み出た血液が消えて無くなる。ということは無く、皮下に溜まっていた血液が押し出され、血液汚れは先程より少しだけ広がり、指先に残ったままであった。


 「………異世界誘拐の確定……と」


 その現象を確認し、ゲームと同じ効果では無いと分かり。暗い顔で指先同士を擦り、己の血液をその指先に伸ばしてゆく。


 「救出は絶望的で身体は女に。ゲームと同じ施設はあれど補給は不明。どうすっかなぁ………」

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