表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/33

お題→三匹の子豚、その後

お題→三匹の子豚、その後

「お先、失礼します」

「ちっ……帰るのか……」


 課長の冷めた目を無視して、タイムカードを切った。

 そもそも定時というのは帰るためにあるのだ。


 俺の弟、ブー三郎。

 今日は彼の新しい事務所の設立記念パーティだ。しがないサラリーマンの俺とは違い、優秀な彼は若くして世界でも有名な建築デザイナーになっていた。



 事務所に着くと、ブー三郎は屈託のない笑みを浮かべて俺に駆け寄ってきた。


「やぁ、ブー次郎兄さん!」


 祝いの品を手渡し、あたりを見渡す。


 素人目に見ても洗練された事務所。

 中庭には、うっとりするようなドレスやビシッとしたタキシードの来賓客。


 ヨレヨレの安スーツに身を包んだ俺は悪い意味で浮いていた。俺はため息を漏らしながら、客の中に兄の姿を探す。

 ブー三郎は思いついたように口を開いた。


「あ、ブー太郎兄さん今日来れないって」

「えぇっ!?」


 今日だけはみんなで集まろうって言ってたのに。

 兄さんは相変わらずだなぁ。


 せっかちでなんでもやってみるタイプのブー太郎兄さんは、数々の事業をおこして失敗と成功を繰り返した。その経験をもとに、今はベンチャー企業のコンサルとして国中を飛び回っている。

 仕事について語る兄さんはいつだって楽しそうだ。


「優秀な兄と弟を持つと、真ん中は辛いなぁ」

「あはは……でも、僕が一番羨ましいのはブー次郎兄さんだよ」


 しがないサラリーマンをつかまえて、何を言っているんだか。俺はブー三郎に手を振ると、パーティ会場をあとにした。


 家に電話をかける。


「これから帰るよ」

『お疲れ。サブちゃんの事務所どうだった?』


 妻と話しながら駅に向かう。

 娘と息子が楽しそうにはしゃぐ声を電話越しに聞いた。


 まぁ、そうだな。

 成功だけが全てじゃない、か。


 俺は少し頬を緩めると、平凡で暖かい我が家へと足を向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ