お題→かぐや姫、その後
お題→かぐや姫、その後
お爺さんとお婆さんの泣き顔が遠くなっていく。
輸送船はそのまま加速していき、青い星はあっという間に小さな点となった。
私は船窓の外を眺めながら、小さくため息をついた。
『PP-0245、長期間の惑星探査お疲れ様でした』
「コードネームで呼ばないで。しばらくノスタルジックな気分に浸っていたいの」
私は丁寧に衣装を脱ぐ。これは産業レベルが未発達な惑星の手作り品だ。
オークションにでも出せば一生遊んで暮らせるだろうが、残念ながら既に研究所へ提供することが決まっていた。
ラバースーツを着る。
快適だけど、どこか味気ない。
着物をくれたときのお爺さんの顔が頭に浮かぶ。
『あなたの収集した情報は、発展途上惑星の貴重なサンプルデータとして研究所でも高い評価を受けています』
「そう……」
私はフードストレージからカロリーブロックを取り出して齧る。調整されたつまらない美味しさにため息が出る。
お婆さんの味噌汁が飲みたくなった。
『PP-0245、疲れていますか』
「だからコードネームで呼ばないで。私は、カグヤよ」
しばらくはそう名乗っても構わないだろう。
私は窓から視線を外すと、ラバースーツの下に着ている辺境惑星GH430型整形人体を脱ぎ捨て、不快なほど柔らかいソファに身を委ねた。





