お題→地の文という概念が存在しない世界、文豪、キラーパス
「はい、というわけで今週もやってきました文豪に聞いてみようのコーナー。司会は私、白滝チュリステル。そして今や時代を代表する名作家でいらっしゃいます、まさ──」
「まさかミケ猫であーる! ふはははは」
「(うわっ)テンション高いですね」
「ははははは、そのドン引きの顔、鼻筋の通った美人が台無しじゃないか、白滝ちゃん。赤いピアスもよく似合っているのだから、もっとにこやかに。スマーイル!」
「(げっ)はぁ…………」
「ふふん。そんな引いた姿勢で良いのか。もう小説講座は始まっているのだぞ」
「えっと、そうなんですか?」
「うむ。何も私がウザい性格だというわけではない。この冒頭の入り方に、小説に大切な要素がてんこ盛りに詰まっているのだぞ。いいな、私がウザいわけではないのだ」
「(帰りたいなぁ)なるほど。それはどんな要素なのですか?」
「ふはははは。まずは口調から。この場は二人の会話なのだから、冷静な白滝ちゃんとテンションの高い私という構図を意図的に作っているのだ! これが二人とも冷静だったら、誰が話しているか分からぬからな!」
「あ、意外とマトモな……」
「それから、主人公は口が達者でなければならぬ。これは、ありとあらゆる小説に共通することである!」
「?」
「ふははははは、わからんか! 小説の主人公とは、セリフだけですべての状況を説明しなければならぬのだよ。白滝ちゃんの美人な容姿をはじめに語ったのもそのためだ」
「あ、そういう……」
「つまりだ! 登場人物をフルネーム呼びしたり、やたら状況を細かく説明したり、ツッコミがウザいくらい説明的でクドくなったりするのが小説主人公の宿命というわけだ!」
「なるほど。でも、私が前に読んだ小説では、物静かな主人公もいましたが……」
「それは、代わりに周りの登場人物が雄弁なのだろう? 親友キャラなど比較的よく主人公のそばにいる者が、代わりに状況を説明するパターンだな。いずれにしろ説明キャラが誰かしら必要なのだよ!!!」
「なるほど」
「ふはははは、だから例えばだ。こうして我々が喋っているのがラブホテルの一室だ、ということは誰かがセリフにしなければ読者に伝わら──」
「捏造です。ただのスタジオです」
「そうそう。こんな風に会話の中でひねりを加えながら読者に説明していくのだ! どうだ、現実にいたらなかなかウザいだろう?」
「はい」
「ははは、即答されちゃったよ」
「(殴りたい……)会話以外でそういった、状況や人の見た目などを伝える手段はないのですか?」
「うぅむ。昔は『ジノブン』と呼ばれる手法があったらしいのだがなぁ。失われて久しい。どんなものか、誰もわからぬのだよ」
「そうなんですか……」
「ふはははは。勉強になったかな」
「はい、ありがとうございました。最後になりましたが、文豪の皆さんにはいつも『即興で小説を作る』というチャレンジをして頂いています。まさかミケ猫さんもよろしいですか」
「ふははは、いいだろう」
「…………それでは。『無口な男が部屋で一人、無心で酒を飲んでいる』というシーンをお願いします」
「────ちょっ!!?」





