お題→自分の体を代償にして攻撃する能力、車、橋
会社帰り。
人気の少ない路地で、黒いローブに身を包んだ男に襲撃された。
振り下ろされる鉄パイプ。
俺は両腕を強化し、受け止める。
「ククク……さすがは我が魔王。その力、ぜひ我々の組織のために役立ててもらわねば」
「黙れ。俺はみだりに力を使わねぇって決めてんだ。おとなしく立ち去れ」
男はニヤリと笑みを浮かべた。
脚力を強化し、駆ける。
逃げの一手だ。
俺は「体毛を犠牲にすることで願いを叶える」という超能力を持っている。割と毛深い俺はこれまで、胸毛、脛毛、脇毛なんかを犠牲にしながら能力を使ってきた。難点は、毛がまた生えてくるまでは能力を使えないという点だが。
のんびり生きて、たまに能力を使えばいい。
そう思っていた俺のもとに「組織」を名乗るものが現れたのが五年前。それ以来、ギリギリの体毛消費で奴らを追い払いながら、なんとかやってきたのだが──。
気づけば、男は先回りをして俺のことを待ち構えていた。
「そう邪険にしないでもらえるかな」
「くっ……」
「重要度の低い脇毛ですらそれだけの能力を発揮するのだ。これで、髪の毛などを犠牲にしたらどれほどの力が──」
「ふざけるなっ! 俺の髪は、俺のモノだ。誰にも奪わせやしない」
男を睨みつける。
ただでさえ最近薄くなってきているのだ。
髪を犠牲にするなど考えられない。
「我が魔王。世の中にはハゲ専女子なるものが」
「馬鹿やろう! その幻想はぶち壊されてんだ! デブ専男子の存在に期待してダイエットから目を背けるマシュマロ女子みてぇなこと言ってんじゃねぇ!! あれは『ただしイケメンに限る』って奴なんだよ!!!」
「だが、加藤茶という──」
「それについてコメントする危険を考えやがれ!」
──念動。
俺は残り少ない脇毛で周りの物を浮かせる。
それらを男に飛ばそうとして──。
「我が魔王、あれを」
「む!?」
男が指差す先。
あれは、橋の上から落ちかけている車!?
しかも、車の中に数人の子供の姿が。
「さて。残りの体毛が少ない今。我が魔王よ、あなたはどうされますか?」
「くっ…………」
悩むための時間はもうない。
俺の決断は──。





