お題→花、人形、マスオ
お題→花、人形、マスオ
僕がリビングに入ると、家族はみな無表情だった。まったく人形でもあるまいし、なんて思いながら、僕は端の席に座る。
妻、息子、義両親と義弟妹。まるで国民的アニメ作品のような家族構成で、僕はいわゆるマスオさんだ。まぁ、名前もマスオだからちょうどいい。
ただ、あのアニメとは違ってリビングは暖かさの欠片もない。いつからこうなってしまったんだろう。
「おや、テストの答案かい」
テーブルの上には、テストの答案用紙が置いてあった。チラリと見えた名前からして、小学五年生になる妻の弟のものだろう。
「えぇぇ、百点だったのかい」
僕がそう言っても、義弟は不貞腐れたように視線をそらしている。思春期だなぁ。
義弟はいいにしても、頭がツルツルな義父もまた腕を組んで小難しそうな顔をしている。気に食わないことをしたつもりはないのにな。
どんなに冷たくされても、僕にとっては大事な平穏だ。なんとかうまくやっていければなと思う。
スラリとしてスタイルの良い妻は、冷めた目を私に向けていた。明日は結婚記念日なんどけど、彼女は覚えているだろうか。まぁ、ヤキモキするのは毎年のことなんだけれど。
例年通りなら、なんだかんだと着飾って家で待っててくれるし、その後は熱い夜も過ごしているから、それなりの愛情はあるものだと信じたい。
彼女との関係は奪うようにして始まってしまったので、いまだに僕は心の片隅でそれを気にしているんだ。
寝て起きて、翌日。
仕事に行く準備をして、無表情な家族と朝の時間を過ごす。
「おや、テストの答案かい」
テーブルの上には、テストの答案用紙が置いてあった。チラリと見えた名前からして、小学五年生になる妻の弟のものだろう。
「えぇぇ、百点だったのかい」
僕がそう言っても、義弟は不貞腐れたように視線をそらしている。思春期だなぁ。
僕は花屋へとやってきた。
花を買うためだ。
のんびりと店内を歩きながら、店員の様子を伺う。他の客が花束の相談をし始め、こちらに背を向けて熱心に話し始めた。
今だ。
僕は展示された花をさっと抱えると店を出て──。
「おい兄ちゃん。今日の盗みはずいぶんと雑じゃねぇか」
ガタイのいい男性に捕まった。
パトカーの中。左右を警官に固められ、逃げられない空気。
僕は家族にだけ連絡を取らせてくれと言うが、警官は首を横に振る。日本の警察はなんて不親切なんだろう。
「伊藤マスオ。35歳独身、一人暮らし。家にあったマネキン人形は、数年前に盗品として届け出のあったものだな。まったくあんなもんどうやって──」
違う、あれは家族だ。
確かに奪うようにして手に入れたけれど、過ごした時間は誰にも否定させやしない。
違う。違う。違う。
「頭は悪くねぇんだろう。調べはついてんだ。あんなに綿密な計画を立てて盗んでおいて、異常者のフリなんてやめろよな」
うるさい、黙れ。盗品じゃなくて家族なんだ。冷たくても、話せなくても、僕にとっては唯一気を許せる大切な──。
「証拠品として押収したがよぉ。まさか怪盗フグタほどの男が、家で一人でお人形遊びとはなぁ」
違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
こうして、僕の家庭は壊れた。





