お題→カイロ、骨粗鬆症、魔法
お題→カイロ、骨粗鬆症、魔法
ヒエちゃんは、この魔法学校で「氷姫」なんて呼ばれているアイドル的存在だ。
基本的に無表情で友人を作らない彼女。幼馴染というだけの理由だけで彼女と仲のいい俺は、周囲から何かと目の敵にされる事が多い。
「ハルくん。ごめん……こんな危険な決闘を引き受けることになったのは……私のため、なんでしょ?」
涙目で俺を見るヒエちゃん。
氷魔法を使う子は感情表現が苦手なことが多くて、周囲から冷たい子だと誤解されがちだ。でも、ヒエちゃんがとても優しく繊細な子であることを、昔から仲のいい俺はよく知っている。
俺は口角を上げて、彼女のサラサラの髪をそっと撫でた。
「俺自身の矜持のためだ。ヒエちゃんが気に病むことじゃないさ」
正直、決闘が怖くないと言ったら嘘になる。極限まで魔法を使ってしまえば、この体がどうなってしまうのか……考えただけで震えがくる。
「……これ飲んで」
ヒエちゃんが手渡してきたのは、白い液体の入った小瓶。
これは──。
「特濃牛乳!?」
これ、すごく高かったんじゃ……。
魔法を使うには体内のカルシウムが必要だ。だから、魔法使いたるもの牛乳や小魚は常備している。
ただ、決闘の場に小イワシなどは持ち込めない決まりだ。事前に補給した分で全てを補わなければならない。
カルシウムが切れれば、待っているのは恐ろしい骨粗鬆症だ。
「今さら、決闘をやめてなんて言えないから……絶対、勝って」
「おう、任せとけ」
小瓶の蓋を開け、腰に手を当てる。
上を向いて一気に飲み干す。
「これで完璧。安心して見てて」
「……うん」
正直、決闘相手のサロン先輩は強敵だ。肉弾戦を得意とする珍しい魔法使いで、どんな傷を負っても得意の治癒魔法で回復してしまう。
『両者、ステージへ上がれ』
会場に響くアナウンス。
目の前には気迫十分のサロン先輩。俺はふぅと息を吐き、ギアを上げていく。
『決闘条件を確認する。治癒魔法科二年、サロン・シップ。火炎魔法科一年、ハル・カイロ。この決闘に負けた方は、氷嵐魔法科一年ヒエ・ピタへの自分からの接触を禁止する』
ヒエちゃんにしつこく纏わりつくコイツを、これ以上放置はしておけない。
策は練った。あとは勝つのみだ。
『決闘、はじめっ!』
俺は両手に炎を纏い、地を蹴った。





