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お題→よろずの神々、猫、何をやっても不幸を招く少女

お題→よろずの神々、猫、何をやっても不幸を招く少女

 周囲の人たちは、私を不幸だと言います。

 確かに、幼少期に両親が事故で亡くなり、親戚をたらい回しにされた挙句、厳しい施設で育ちました。誰かに愛された記憶もありません。

 それでも、そこまで不幸だとは思いませんでした。だってこれまで、私は重い病気や怪我に苦しむことはなかったもの。


 看護学校を出て、海の見える病院で働き始めました。

 昔から、病院は好きでした。重い病気や怪我をしている人たちを見ると、やっぱり自分は周りが言うほど不幸ではない、なんて実感できるからでしょうか。


「あら、また猫ちゃんが来たのね」


 黒い影が病室に入っていくのが見えました。そして案の定、翌日には病室のお婆さんが亡くなっていました。


 私は昔から猫ちゃんを見ることができます。

 その猫ちゃんは影のようなぼんやりした体をしていて、どうやら他の人には見えないのだそうです。そして、猫が体をすり寄せる人は、例外なく近いうちに命を落とします。


 苦しむ者に(やすらぎ)を与える。

 すごく優しい猫ですよね。


 猫ちゃんとは何度か夢でお話したことがあります。実は神々の一柱で、死を司る神なのだと言っていました。

 それに、どうも私のことがお気に入りなのだとか。近々あちらの世界に呼び寄せるから、仲良くやりましょう、なんて体を擦り付けてきました。


 死の神を名乗るだけあって、きっと万人に平等な良い神様なのでしょう。私は夢の中で猫ちゃんを撫でながら、その日が来るのを楽しみに待つようになりました。




 その朝は、街全体が変でした。

 ほとんど全ての人たちの肩に猫ちゃんが乗っています。当然私の肩にも黒い影がちょこんと座っていました。


「やっと来ましたか。これからよろしくお願いしますね、猫ちゃん」


 その日は浮ついた気持ちで働きました。

 看護師長から理不尽な小言を言われても、院長に胸を揉まれて股をまさぐられても、今日はあまり気にはなりませんでした。だって、彼らの肩にも猫ちゃんがしっかり乗っているんですもの。


 穏やかな昼下がり。

 その瞬間は突然やってきました。


 鳴り響くスマホのアラート。グラッと大きく揺れ始めた病院。なんとか窓の外を眺めると、海の水がひいているのが見えました。遠くの沖合には巨大な水の壁ができています。


「全員屋上に避難するぞ、登れ」


 職員たちが無駄な抵抗をしています。

 私はクスリと笑って、肩に乗る猫ちゃんとじゃれ合いました。

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