第7話 14歳と人生の分岐点
この話から2話くらいはシリアスな展開になります。軽やかな話にしたいところですが、話に深みが欲しくなったのです。どうかこういう暗い展開が嫌いな方も数話だけですのでお楽しみください。
「うぐ……ふっ!!」
俺は上段に迫ってきた木剣を自分の木剣で受けるが、思った以上に剣撃が重い、がそれを受け流し速度で攻める。
「よいしょ!!おらっ!!」
相手は予想以上のルシムの剣速に追いつけず一撃を受けてしまう。
「うっ!!……降参だ。」
相手は腹に木剣をモロに受け膝をついていた。こいつは7歳の時からの親友のトップ・ナーザスだ。
俺たちは去年14歳になり、今年15歳で成人になって職業を決めないといけない。
俺は165cmほどに落ち着き、髪はロングで今は後ろでくくっている。顔立ちはまつ毛が長く鼻筋がしっかりしているが可愛い顔をしているみたいだ。自分的にはカッコいいほうがいいのだが。
トップは、身長178cmと羨ましいくらいに伸び、赤髪の短髪のままで、顔は相変わらずイケメンだが厳つく、細マッチョなその体は女受けしそうだ。けしからん!!
俺は7歳から10歳まで現実、脳内同時での修行をし始めていた。そしてトップも1人で剣術稽古をしていたみたいで、2人で特訓するようになった。統合したスーパーレアスキルと、脳内特訓があり技術的にも俺の方が上だ。
なのにもかかわらず、はじめは俺の方が勝っていた。だが途中から技を盗み、努力し、俺と肩を並べるほどの剣術を身につけた。それからは毎日こんなふうに勝負をしている。今のところ五分五分だ。
こいつ才能がありすぎるんだよ。俺みたいな脳内スマホに頼ってるわけでもないのに強すぎる。
そして10歳からは勉強アプリを買い、座学を主にしている。もちろん武術訓練もしている。寝ながら脳内特訓をするという特技を身につけたからな!!これぞ睡眠学習だ。
『ルシム様、今日のスケジュールはこの後に勉強のお時間、その後に近くの森にて魔物の討伐でございます。』
ミカはいつのまにかスケジュールを勝手にするようになり、頼りになるが駄々をこねると注意されたりしてオカンみたいな存在だ。
『私はオカン、もといお母さんではありません。そもそもルシム様が効率よく強くしてくれというので………。」
口うるさく叱ってくるようになった。感情プログラム買ってないのに感情豊かだな、買ったらどうなるんだろ。
「じゃあ勉強するからまた明日なー」
「ルシムお前勉強とかよくやれるよな。頭痛くなるぜ。」
「トップは少しは勉強しねーとお前の母ちゃんに怒られるぞ!!お前の母ちゃんこえーんだから」
そして俺は勉強を始めた。基本的に数学などは前世でやっていて余裕なので、やっていることはこの世界「オクトゥーンシア」の歴史や、種族の勉強だ。
今から5000年前に魔族は生まれた。その理由は神が作ったとも言われるし、魔物が進化したとか、魔物の突然変異とも言われている。文献に残っているのは、ある神と、天使たちが魔王と戦った「天魔世界大戦」と言われる戦争があったからだ。その神は神でも邪神らしく、天使たちも、どちらかというと悪魔に似ていたとのこと。
その大戦は一応魔族側の勝ちに終わったが、その傷跡は深く魔族はかなりの数まで激減し魔族は生きにくい世界だったとのこと。それが3000年も続き長らく魔王というものが存在しない時代、ある吸血鬼が力を振るい魔物を借りまくり、果ては自ら魔王の国を作りその圧倒的な力と頭脳で生活の基盤を作った人物だ。
その魔王が現在北の国[ヴァンプ魔族国]を支配している【妖魔神】ダグラス・エンド・ヴァンプ、その人である。
大戦の理由などは残っておらず、未だに謎のままだ。
「ふぅ~~疲れたー。さぁ魔物でも一狩り行こうか!!」
俺は14歳から魔物を狩るようになり、辺境なのでゴブリンやオークしか居ないが。この程度じゃレベルは上がらなかった。
「ギギッ!!ギャーーー」
おっと、さっそく3匹のゴブリンの登場だ。顔が醜いし、くさい。
「ふっ!!」
最速で1匹の首を刀で飛ばし、その流れのまま2匹目の頭に刀を突き刺した。生暖かい感触が気持ち悪い。あいにく俺が魔族に転生したからか罪悪感はない。
「グッ…ギャーーーー」
仲間が一瞬でやられて腹が立ったのか飛びかかってきた。
「【グラビティ】」
重力魔法の初歩だ。相手の体重の2倍の重力を相手にかける。弱ければ潰れるし、強くても速度が下がる地味に便利な魔法だ。今回は耐えたみたいだ。ならば。
「【ホーリーフォール】」
《聖・光》と《闇》の魔法はそれぞれ複合魔法であり、聖・光魔法は、火と水、相反する属性を合わせた魔法だ。闇魔法はあるが無属性魔法を相手にかけることで闇魔法と名前が変わるだけだ。難易度は高いが状態異常に出来る魔法だから有用だ。
ホーリーフォールでゴブリンは消え去り、地面の土には焼け跡だけが残った。
「ふぅ~まぁこんなもんか余裕だな。ん?だれだ??」
後ろに気配があり振り向くとそこには青い顔で左の目から血を流したトップが居た。
「はぁ……はぁ……んっぐっ、ル、ルシム、村が大変……だ……」
「おい!!トップどうした??いったいなにがあった!!」
突然のことで声を荒げてしまった。
「突然……大きな……白いお、狼の魔物が村を襲ってきて……俺は剣を持ち戦ったが…俺は…俺は!!うっ……」
「とりあえずお前は休め!!俺は急いで村に戻る!!」
「その翼は……ルシム!!ダメだ!!村は……」
そして俺は真っ黒で輝いても見える翼を広げて高く飛び上がり、風魔法も使用し最高速度で村へ向かった。そのときトップが何かを言っていた気がしたが気付かなかった。
お読みいただきありがとうございます。次話は少し展開が暗いですが精一杯書きますのでお読みください。