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3.白い世界
世界が、真っ白だった。
凍りついたような景色の中、一切の音も聞こえない。
「誰か……いるの?」
震える声は、どこかに吸い込まれたかのように早々と消える。
返事はない。
応える声を期待した少女を嘲笑うかのように、ただ、静寂だけが取り巻いている。
不安そうに表情を歪め、少女は後ろを振り返った。
少女の動きに合わせて、美しい黒髪が力無く広がる。
少女の視線の先には、ただ、真っ白な世界が広がっている。
華奢な腕で自らを抱いた少女は、倒れるように蹲った。
そこには、真っ白な世界が広がっているだけ。
少女に手を差し伸べる者は、誰もいない。