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No.5 小さいのがいるときは騒ぎ立てるな

趣味で書いてますよ、っと。後、今回長すぎます。ちょっと長くなりましたね。

 右手がまだ完治しないまま僕は教室に入った。

 外の景色は瓦礫の山が全てを支配しているようだった。そこには、危険立ち入り禁止というそれすらも古い看板が立っていた。何か落し物でもしていない限り、入るはずの無いところを立ち入り禁止にしても意味は無いと思うし、べつにそこまでして入りたいとも思わない。

 そして、席に座ろうとしたとき、右側の席一つ分飛ばしてマスクをしている女子がいた。

 彼女はくしゃみをすると、砲撃のような衝撃波が発生するという特殊な能力の持ち主だった。その「おかげ」で、僕の右腕は包帯ぐるぐる巻きミイラとなった。困った。両利きでよかったけど。

「おはよー」

 元気な少年をよそってみたが、彼女からの視線は何だか白い目線だった。

 死んだような目をしている彼女の白い目線は、かなりの喧嘩をバーゲンでもしているかのような大安売りしている感じだった。普通の人なら、ここで怒るだろう。しかし、僕は怒らないのです。

 だから、こうするのです。

「大丈夫? 鼻」

 彼女の頭に怒りの印が浮かび上がったような気がしたのです。

「人が気にしていることを何の抵抗も無く言うなぁぁぁぁ!!」

 彼女の死んだような目は鋭い眼光に変貌し、気のせいか髪の毛がオーラをまとい、ふわふわと浮かんでいるような・・・。いやいや、そのオーラは負のオーラ。怖い。

 恐怖だ。だが、僕にはそんなリアクションはできない。

「え、えぇぇ!?」

「今この一時だけでもマスクを外してあなたに向けてぶち込んであげましょう!! それが私からの感謝のいっぱい詰め込んだ贈り物です!!」

「いりません、いりません! お歳暮でもいりません、一週間以内といわずに即日返却です!!」

 彼女が手に構えたのは先を細くし、ぐるぐるにした鼻をかむことを普通はするであろうティッシュ。それを鼻に突っ込んだ。そして、ぐるぐるティッシュを無造作に動かし、自らの鼻の中をぐるぐるかき回し始めた。

 そして――。

「へっぐじょん、へっぐ、へっぐしゅん、へっぐどん、へっぐぼん、へっぐしょん!!」

「女子生徒が出すくしゃみの音じゃないでしょ!!」

 砲撃の連射。教室が完膚なきまで大破していく。立ち上る煙の合間から見えた景色の中で、みんなは既に壁の方に寄っている。避難している。なんという早さだ。

「ふぎゅらあああああ!!!!」

「え?」

「ズビー・・・?」

 何か声が聞こえたような気がしたが、煙で何も見えない。教室を完膚なきまでに大破させた砲撃は周りから、この戦場を視界的な意味で孤立させた。だから、何も見えない。分からないです。

「ひ、ひどい・・・わたすがここにいるの・・・に」

 気のせいではないその声により、一時彼女の砲撃くしゃみ砲は砲撃を止めた。そして、煙が次第に薄くなり視界が良好になり始めた瞬間、教室の扉がゆっくりと開き、換気の要領でさらに煙が薄くなっていった。

「・・・ん? なんだここは? 教室か?」

「ふぇぇぇ・・・」

「んぉ?」

 そこに現れたのは、山下(砲撃くしゃみ女)にマスクをすることを強制した男、その名も右左団子。通称ウサ男だった。ウサ男はぎしぎし軋む床を別に恐れることも無く、歩いてみせて、さらにその声の主に近づいた。

 その様子をじっと見ていた僕と山下に、その倒れていた女子生徒に会話を繰り広げるのを見せた。

「・・・まさか、山下の砲撃食らったのか? 食らったらこの右腕みたいになるぞ。大丈夫か?」

「大丈夫。何とか立て・・・る」

「そうかー。ん? 自己紹介してなかったのか? こいつは俺の双子の妹の月美だ。右左月美。通称ウサ美」

 そして、僕達の二分の一の身長ぐらいの小さな彼女は自分の顔を触り、無いものを探し始める。

「め、めがねが」

「え? めがね?」

 僕は動いたのです。体が自然に。嘘じゃありません、本当です。動いた体がその後、そんな事態を招くとは思いもよらなかったです。

 僕の足音は軋む床の音を奏でずに、何かガラスのようなものを踏みつけて粉々なまでに状態変化させたような音を奏でたのです。

 目の前で・・・何かが変化し始めました。

「め、が、ね」

「えっと・・・ズビー・・・わだじはじらない」

 逃げました。山下が。

「え!?」

「ま、達者でやれよ」

 逃げました。ウサ男も。

「えぇ!?」

「め・・・が・・・ね・・・割れる音でしょ? 割れる音が聞こえたわ。気のせい? 気のせいじゃないわよね。ほら、窓ガラスはあんなにもきれいなのよ。割れてなるものですか。めがねじゃないわよね? あなたの音? そうよね。あなたの音よね? あなたが鳴らしたのよね?」

「ひ、ひぃ!?」

 砲撃の方がまだ怖くないです。

「鳴らしたんでしょ? あの音を。バキッと。ボキッと。何かをへし折るような。そうでしょ? ねぇ答えてよ。答えなさい。答えろ。答えて。ねぇ、ねぇ!!」


「先生。教室に入れないんですが」

 俺と山下、そして、クラスのみんなは廊下に立っていた。目の前の扉に立ち入り禁止の文字が大きく書かれていた。

「教室を工事してるんだ。しばらくは課外授業になる」

 そこに現れたボロボロの少年。今度は右足も包帯ぐるぐる巻きになっていた。

「で、右足を怪我したのか」

「ウサ男。右足を怪我したと言うよりは右足を潰された感じです」

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