No.2 入学式に必要なのは校長と生徒と教師
趣味で書いてます。小説というよりは短編集。
「先生。僕、こんなので入学式出れませんよね」
「出れるぞ」
「へ?」
「さぁ、早く。皆も並んで」
砲弾に巻き込まれた右腕の包帯を気をつけて運びながら、皆と並びます。気になります。
体育館に着きました。体育館とは思えませんでした。至るところが崩壊寸前です。ねずみというより虎、もしくはライオンが入れそうな穴がいくつも空いています。人工的にとは言いませんが、日常的にこんな穴が空くことが無いので、皆引いていますが、僕は似たような光景を朝見ているので、嫌なことを思い出しました。
思い出したくなくても思い出しました。
靴箱すら崩壊しており、先生が「土足でいいぞ」と言っているのに、ふざけて靴箱っぽいものに靴を入れようとした生徒の目の前のそれが崩壊したのも僕はスルーしました。その生徒は当たり前のことですが靴を失いました。
「遅れてすみません」
先生が大きな声でそう言うと、天井が少し揺れるのを感じました。危機的状況であるとその場にいた全員が悟れたはずです。
「えぇー、それでは一年生がそろったところで入学式に移りたいと思います」
校長先生であろう人がステージの上で、僕達がパイプ椅子に座るタイミングを計り、そうしてしゃべり始めたその時です。大変なことが起きました。
「それでは、今年の新入生を歓迎して校歌を歌いたいと思います」
「校長先生、それは無理です」
教頭先生が挙げなくていい右手をきれいに挙げて、そう言った。校長先生は「そうですね」と平日のお昼の番組の観客のように言った。だから、こんなことが起きたのだ。
突然、目の前がまっくらになった。
「先生、何でこんなことになったんですか」
「築250年はやばかったか」
瓦礫の下のやり取りです。