49 宿屋へ…
今回から更新ペースが遅くなります。
その代わり文字数を増やします。
「では…こちらに名前をお願いします…。今回のプランは一泊二日となってますので、それ以上を希望される場合、延長料金が発生するのでお気をつけください…」
「はいよ!」
「うむ…」
「ふぃー…暑っ!」
そんなこんなで…俺たちは無事ウザインと合流…。
近くのやっすい宿屋で一日を過ごすことになった…。
見た目はまぁ…ボロボロだが住めねぇこともないか…。
あと…受付の人もやけに親切だから居心地は良さそうだ…。
それはそうと…
「…お前…大丈夫か?鎧でめちゃくちゃ汗かいてるんじゃ…」
「…こんくれぇ大丈夫だよ!…って言いてぇけどな…正直キツいわ…」
ウザインのやつ…鎧で完全防備状態だ…。
さっきも暑いとか言ってたよな…。
脱水症状とかにならなきゃいいが…。
「んまぁ…お二人の前でぶっ倒れるようなことはしねぇんで…安心してください!」
口は軽いけど…なかなか大変なようだ…。
怪力オークとはいえ…万能ってわけじゃねぇんだな…。
んでも…ここで脱がれちゃあ正体バレるし…。
なんか申し訳ねぇ…。
「さてと…こいつに書くわけですかね…。さっさっさ…のさっと…」
カキカキカキ…。
ウザインのやつ…名前を書いてるけど…まさか本名じゃねぇよな…。
偽名じゃねぇとヤバイぞ…。
…ちょっと見てみるか…。
ヒョコ…
「ん?おめぇ…なに後ろから見てんだ?なんか恥ずかしいぞ?」
「ん?いや…お前…なんて書いてんの?」
「はぁ?そりゃ…名前書いてるぜ?」
…まさか…。
俺はちょっと気になって名前の欄を見てみると…そこに書いてあったのは…
『ウザイン・ケルビーノ』
「ちょっ…!?これっ…!!まさかお前の…!?」
「ん?なんだ?本名書いちゃわりいのか?」
いや!
わりぃもなにも…こんなとこで書くなよ!
正体ばれたらどうすんだよ!
あとケルビーノってなんだよ!
お前の顔…ケルビーノって感じじゃねぇだろ!
…と言いたかったが…。
「どうされましたか?なにか不都合でも…?」
くっそー!
受付の人がいる手前…そんなこと言えねぇな…。
ここは…なにも突っ込まない方がいいか…。
「いや…なんでもねぇ…」
「…おめぇ…なんか調子わりぃな…どした?」
原因はお前だよ!
※※※※※※※※※※※※※※※
「ふぃー…やっと脱げるぜ…よっと!」
ゴソッ…ズズッ…
部屋に着いて…ウザインは鎧を脱いだわけだが…。
「むおっ!?ちょっと臭いきついぞ!」
「ん?そうかぁ?クンクン…んまぁそれもそうだな…」
ったく…。
汗の臭いがひでぇわ…。
一発で倒れちまうな…。
「とりあえずシャワー浴びとけ!この部屋の中にもシャワー室はあるみてぇだし…」
「おう!んじゃ…失礼するわ!」
ドタドタ…ガチャン…。
ふぅ…これでちょっとは居心地よくなるかな…。
それにしても…。
この部屋…ボロいっちゃボロいが、意外と落ち着く…。
シンプルな間取り…ってのがいいのかもしんねぇな…。
「…ふむ…魔王として…こんなところで夜を過ごすのは複雑だが…気分は悪くないな…」
クリスも口ではあんな感じだが、思ったより気に入ってそうだ。
城での豪華絢爛な生活に慣れているから、愚痴のオンパレードかと思ったんだが…。
んまぁいいや!
「そういや…この箱って何が入ってるんだっけ…ちょっと確認するか…」
ゴソゴソ…
「なっ!コラッ!ユキ!何をしている!」
まぁまぁ…いいじゃねぇか…。
…と心の中で思いながら、俺は店主のおっさんから貰った木箱を開けてみようとした…が…
バチッ!
「いてっ!!」
うぅ!
何が起きたんだ!?
箱を無理矢理開けようとしたら…電気が走ったような…。
「まったく…お前は馬鹿だな…」
「ちょっ…クリス!これどういうこと!?」
「どうやらその箱には魔法が仕掛けられているようだな…。見たところ…防御系のようだが…」
「まっ…魔法!?こんな箱に魔法かけんの?」
「当たり前だろう…だからこそ店主も箱を届けるよう依頼したんじゃないか…」
なっ…なるほど…。
確かに…これなら俺たちが箱を持ってトンズラなんてできねぇ…。
中のものを盗もうにも取り出せねぇし…。
すげぇな…。
いや…それよりあのおっさんが魔法を扱えるってのもやるな…。
見た目からは想像つかねぇ…。
…いや…誰かに魔法を頼んだ可能性もあるか…。
「くっそぉ…なんか気になるんだが…」
「それ以上は触らんことだな…。命に関わる類いの魔法ではないが、痺れるだけだ…。とにかく…明日の配達を気を付けんとな…」
「へいへい…」
ったく…クリスのやつ…めちゃくちゃクールにしてんなぁ…。
んまぁ…今日はゆっくりしておくか…。
中身は気になるが…しょーがねぇ…。
「…さて…それよりも飯はどうする?俺も宿代で精一杯な気がするんだが…」
「…そこは仕方ないだろう…。今日は安いパンで我慢するしか…」
「うげぇ!マジかよ…。あんなパサパサのやつで夜ご飯とか…」
「文句を言うな!男だろ!」
はぁ…。
クリスのやつ…まるでどっかのおっかさんみたいなこと言うなぁ…。
なかなか厳しい…。
今に始まったことじゃねぇけど…。
バシャァ…!
「おーい!シャワー空いたぜぇ!」
「ちょっ!?ウザイン!裸で出るなって!めっちゃビビるわ!あと早すぎ!」
「気にすんなって!」
むぅぅ!!
こっちにもめんどくさいやつが…。
まるでどっかのおとんみたいなことするなぁ…。
…どっかのおかんとおとん…そして俺は…ってややこしいわ!
「…ウザイン…私がいることも忘れるなよ?そんな格好でいるなど…」
「はっはっはっはっ!クリス様!気にしないでください!俺はいつもこんな感じで…」
「「いいから服を着ろ!!」」
俺とクリスのハモり声が響くなか…なんとか無事に旅行初日は幕を閉じたのであった…。
…無事じゃねぇな…。
※※※※※※※※※※※※※※※
同時刻…とある果物店にて…
―
…
ジャラジャラ…チャリーン…
「うおっ!?いいのか?こんなにくれるなんて…。俺はぁただ…あの二人に頼み事しただけだぜ?」
「あらあらあらあら…野暮なこと聞くのねぇ…」
「あたりめぇだろ…。あんたみてぇなイイ女に…二人に果物届けるよう頼まれちゃあ裏があるって思っちまうだろ?」
「…ごめんなさいね?理由は言えないの…国家機密だし…」
「国家機密ってなんだよ…。…ったく…まぁいいがよ…」
「それじゃあね…。ここでのお話は他言無用…。ちょっとでも話を漏らしたら許さないから…。わかった?」
「はいよ…」
スタスタスタスタ…
ガチャッ…
「あっ…ごめんなさいね…言い忘れたことがあったんだけど…」
「あ?…なんだよ…さっさと出ていってくれよ…。こっちとしても疲れちまったんだ…」
「フフフ…まぁ…大したことじゃないの…あのね…」
「…やっぱり死んでちょうだい♪」
ブシャァァァァ…ドシャッ…!




