幕間 希望に向かう者達(ユキ)
「ユキ…その…」
「おん?どうしたんだよ…クリス…」
あの激動の日々から3日後…。魔王軍は離散するべく準備に移っていた…。
クリスの出した『解散命令』…。それが全ての魔族に伝わったわけだが…やっぱ皆複雑なよーだ…。
あれだけ頑張ってきたのに…ここで全部を無かったことにするんだからな…。仕方ねぇ…。
とはいえ…それは一時的なものであり、狙いは個々の成長を図るためのもの…。
いつか来る…本当の戦いの時に集まる…。それは全員理解してる…。
ハルア教を打ち破るための想いは…皆同じだ…。
「ユキ…すまないな…。こんなことになって…。せっかく結婚したのに…」
「あぁ…気にすんな!全部…意味わかんねぇ奴ら…ハルア教とかのせいだからよ…」
「…う…む…」
「それに…こうして二人っきりになれたしな…。一緒に頑張ろうぜ!」
「…そうだな…」
そんで…俺はクリスと行動し、特訓をすることになった…。
なんせ…俺はスキルだけが頼みの最弱メンバーだからな…。クリスと一緒に頑張れば…ある程度強くなる…という計画のようだ。
おっと…もちろん…
「キュー…」
俺の肩で休んでるキューちゃんも一緒だ。
最近は寝てばっかりだな…。よほど疲れてんのか…。まぁ…ちょっと無理させてたし…今はそっとしとこう…。
そんで…他のメンバーもだいたいの予定は立てているらしい。
レイヴォルトはエリスと一緒に各地を転々とするみたいだし…。
フィールも…自分の国に避難指示を出したあと、回復したヴォルンと一緒に行動するよーだ…。
皆…強くなるために必死…。そんな気がする…。
あっ…そういや…
…ニュッ!
「ティーを忘れないでなのね!」
「うぉ!ティナ!んなとこいたのかよ!」
いつもの展開…。ティナは俺の影から顔だけを出し、じっと睨んできた…。
実は…ティナも一緒に俺達と回ることになったのだ…。クリスと二人っきり…とはならないが、実は仕方のない事情もあって…。
「あっ…そーいや…メーラも影の中にいるのか?」
「安心してなのね…。メーラも今はティーと一緒なのね。…でも…目を覚ます様子はないのね…」
「そうか…。んでも…メーラを『治す』ためだしな…」
「わかってるのね…」
どうやら…メーラを助けるための伝手がある…というのだ。
そのために…俺達はその場所までメーラを連れていくわけなんだが…。さすがに動けないメーラとそのまま一緒…とはいかない…。
そのために…安全な俺の影の中にメーラを入れて移動し…
影の中から自由に取り出しができるティナも同行しよう…となったのだ。
ちなみに…俺の影の中にいたバルコスなんだが…。
ちと軽い尋問をした後、ティナの転移魔法でかなり遠い場所へとおさらばしてもらった…。
まぁ…影の中にいたおかげでちょっと錯乱してたな…。
悪いことしたが…いや…俺達を殺そうとしてたしな!仕方ないってことにしておこう…。
「すまんな…ティナ…。『あの方』なら…メーラを治せるかもしれんのだ…」
「はい…クリス様のお言葉…私も信じております」
「うむ…」
…伝手の情報はクリスが教えてくれたこと…。どうやら…めちゃくちゃ信頼できるんだと…。
上手くいくことに期待するしかねぇ…。
そんな風に思っていると…クリスはこちらを向いて…今後の計画の確認へと移行する。
「よし…二人とも!これからは長く…険しい試練が待っているかもしれないが…私たちなら乗り越えられる!」
「おぉ!」
「はい!」
「ユキ…ティナ…。メーラの回復…そして…皆の特訓も兼ねて…これから向かう場所はとある森林地帯だ。そこに…かつての私と本物の『ユキ』の師であり…育ての親がいる。その方と一緒に過ごすことになるだろう…」
クリス…そして『ユキ』の育ての親!これは初めて聞いたな…。
特に…俺が転移する前の『ユキ』を知ってるなんて…なんか…すげー気になる…!
「クリス!その…森林ってのは…」
俺の問いに…クリスははっきりとした声で…その目的地の名を口にする。
「私たちが向かうべき場所は…リクォリア大森林…。かつて…神が住まう土地と言われたところだ!」
こうして…俺達は進む…。
多くの不安を払拭し…希望に向かって…。