幕間 英雄の影(フィール)
現在…この作品とは別に新作を執筆中です…
ガチャッ…バタン…
「まったく…目の前で抱きつくとは…。レイヴォルトもエリスも…よほど寂しかったわけか…」
まったく…こちらの目を気にしてほしいものだ…。こっちも恥ずかしくなる…。
さて…エリスも無事なのがわかった今…今気にするべきは…
「国のものはどうしているのか…早く連絡を入れんとな…」
メーラの件は不幸としか言いようがない…。だが…それは今の私にどうこうできることではない…。
少々無責任な気もするが…治療が上手くいくことに賭けるしかない…。
「無事でいてくれよ…メーラ…」
私はそう口にしたあと…そのまま魔王城の外へ…。
病み上がりの体での無茶は厳禁だと忠告されたが…自国へと戻るくらいの余裕はある。
ここからなら…数分でたどり着くだろう…。
バッ…!
翼を広げ…そのまま飛び立とうとしたそのとき…
「フィール様ぁー!!うぇーん…!」
「ぐすっ…大変だよぉー!!」
空から…二人組のヴァンパイア…ミミとルルが降りてきた…。
衣服はボロボロ…。二人とも顔を涙でグシャグシャにしている…。
そして…二人はある人物を抱えていた…。
「…!ヴォルン!」
そこには…満身創痍…身体中にあらゆる傷をつけた信頼する腹心であり…伴侶の姿が…。
こちらからの声にも反応できないのか…ピクリとも動かない…。
バサッ…バサッ…スタッ…
「国に…変なやつが来て…ぐすっ…」
「もう…めちゃくちゃに…なっちゃって…」
「ヴォルン様は…一人で…戦って…」
「ルルと…ミミは…皆の避難を…そしたら…」
「ヴォルン様が…」
「ボロボロに…うぅ…」
二人の話から…おそらく私が国を去ったあとに襲撃者が来たのだろう…。
これも…ハルア教の差し金か…!?
いよいよ…無視できない存在になった…。なにより…ヴォルンをここまで痛め付けるとは…!
くそっ!何者だ…!
「待っていろ!すぐに医療班を連れてくる!下手な衝撃を与えるなよ!」
「…うん…」
「わっ…わかりました…」
そのまま…城の中へと戻ろうとしたそのとき…
「フ…ィール…様…」
「!ヴォルン!聞こえるか!?」
か弱い…消え入りそうな声で私を呼ぶ声が…。
ミミとルルも驚き…ヴォルンの顔を見る…。
まだ息はある…!
「安心しろ!すぐに治療する!それまで…耐えてくれ!」
すぐに彼の元へ行き、精一杯の言葉をかける…。
すると…
「あなたに…伝えたいことが…」
「…待て!今は喋らなくていい!ゆっくりしろ!」
「い…え…。なんとしても…これだけは…」
ヴォルンは顔だけをこちらに向けると…そこで衝撃的な事を口にした…。
「…ジャン…バティスト…デュリが…帰ってきました…。おそらく…あなたを…倒すために…」
「なっ…!!なんだと…!」
「…お気をつけ…ください…」
ガクッ…
そう言って…意識を失うヴォルン…。それ以上…口を動かすことなくぐったりしてしまった…。
「まずい!ルル!ミミ!私が戻るまでヴォルンを頼む!」
ダッ…タッタッタッ!!
それだけを言うと…すぐさま私は駆け出した…。そして…先程の言葉を思い出す…。
やつが…帰ってきた…!
到底信じられない…。私が…首を跳ねたあの裏切り者が…。
動機…私に対する復讐ではないだろう…。あの男はそんな感情で動くやつではない…。
あるのは一つ…。力への渇望…強敵との決戦…。
戦うためなら味方さえも利用し…裏切り…切り捨てる…。
私と共に人間との戦に飛び込んだのも…人間に対する憎しみではなく争いたいがため…。
最強の戦闘主義…それがジャン・バティスト・デュリ…。
結果的には…ヴァンパイアの皆の英雄として祭り上げられたこともある…。私も一時は信頼していた時期もある…。
だが…あの『一件』から…全てが崩壊した…。
デュリを処刑するために…私自ら戦いを挑み…勝利…。その場で亡き者にし…彼の負の歴史を隠した…。
同胞たちに動揺を与えないために…。
予想異常に事態はまずい方向に進んでいる…。デュリの復活の経緯もわからない…ヴォルンは重体…リヴリィア帝国の皆もどうなっているか…。
だが…一つだけわかったことがある。
それは…
いずれ…再びデュリと戦う日が来るだろうということ…だ…。
新作は完成したらまとめて投稿するので…またお楽しみください…