幕間 明かされる秘密(レイヴォルト)
最近…一人称視点の描写を書くと、誰が言ってるのかよくわからなくなるので…。
タイトルのあとに( )を付けて、誰の視点か書きました…。
参考にしていただければと思います。
「エリス…大丈夫か?」
「ん…レイ…大丈夫…。それと…助けてくれてありがとう…」
「いや…その…」
参ったな…。こうしてエリスと面と向かっての会話も久しぶりだ…。
本当なら…色々と話したいこともあるのだが…どうもうまく話せない…。
剣聖として…あまりにも長い時間戦うことに慣れていたからだろうか…。どうも…いつも通りに接することができない…。
そんな俺の様子に…。
ベッドに体を預け、ゆったりと横になっているエリスは…俺の顔を見てほんの少し微笑む…。
「ふふ…レイ…大人になったように見えて…やっぱり子供だね」
「…恥ずかしいな…。相変わらず昔のままだ…」
「でも…強くなったよね…。さっきの戦いも…凄かった…」
「…エリス…その…」
「うん…わかってる…。あの獣人に指導してもらったんでしょ?少し…嫉妬しちゃうな…」
「すまない…」
「謝らないで…。全部…あの獣人の企みだから…レイのせいじゃないよ…」
エリスも気にしていたことはわかっていた…。フェルデリカとどんな話をしたかはわからないが…事の経緯をすでに知っているのだろう…。
俺が…フェルデリカによって強くなったこと…。
正直…気分のいいものではないだろう…。
…いかんな…。こんな話をしてもあまり良くない…。だが…明るい話題もなにも…
「ねぇ…レイ…」
「…?」
俺がそうして悩んでいると…エリスは不意に口を開いた…。そして…今もっとも口にしたくないであろうことを言葉にする。
「…あたしが…ヴァンパイアになって…どう思う?」
「…!エリス…」
「この目を見たら…何となくわかると思うけど…」
そう言って…赤く光る深紅の瞳を俺に向けてくる…。
燃えるような…美しい紅の目…。それは…人間ではなく、魔族…ヴァンパイアであることの証…。
人間の血を好む種族…。そして…高い身体能力を持つ…という特徴を備えている。
俺も…こうして目の前で見るのは初めてかもしれない…。
「…事情があったんだろう?」
「うん…その…」
俺からの問いにやや俯くエリス…。その時…
ガチャッ…
「そこからは私が話そう…」
「…!」
「…フィール様!」
突然の訪問者…フィール・メルリアーノが入ってきた。
体は小さいながらも、その身から溢れる迫力は流石というべきか…。衣服は黒いマントを羽織っているが、その下の体は包帯に包まれている…。
かなり無理をしていようだ…。
コツコツコツコツ…
側まで近づいてくる吸血女王…。確か…フェルデリカによって体力を削られていたはずでは…。
「体は…大丈夫…なのですか?…その…フィールさん」
「堅苦しい話し方はするな。対等と思って…いつも通りに話せ。剣聖ともあろうものが情けないだろう」
「…ご配慮感謝する」
「体調については万全だ。適切な治療のかいあって…話し…歩けるほどにはな…」
余裕のある話し口調ではあるが…やはり少し苦しそうだ…。それでもこの部屋に来たということは…エリスのことを心配してのことか…。
フィールは腕を組むと…早速本題へと移る。
「さて…アリス…いや…エリスがヴァンパイアになった経緯についてだが…どこまで聞いている?」
「…奴隷商に売られた…ところまでは聞いてます」
「そうだ…。私はそこで…病に苦しみ…命耐える寸前のエリスに出会ってな…。その時…彼女は呟いたのだ…。『レイに会いたい』…と…」
「…!」
「当時の私は…そこから問いただした…。『人間をやめてでも…生きたいか?』…とな…。それでも…エリスの意思は固かった…」
「…」
「お前も知っているだろう…。ヴァンパイアは本来身体能力…免疫力の高い種族…。人間ならすぐに死ぬ病も、ヴァンパイアであればさらに長く耐えることができる」
「…ということは…」
「そうだ…。この事実は本来秘密事項なのだが…ヴァンパイアに噛まれた人間はすぐにヴァンパイアになる。牙に仕込まれたウィルスが作用して…という俗説があるが原因ははっきりしていない…。私は…エリスを少しでも延命するため…エリスの首に噛みつき…ヴァンパイアにしたのだ」
「そのあと…エリスを保護して…治療した…というわけか…」
「そうだ…彼女には酷なことをしたと思っている…」
これで疑問が解決した…。フィールはエリスを助けるために…エリスをヴァンパイアに…。
確かに…その状況であればそれしか方法がない…。
ユキはこの事を知っていたのだろうか…。知っていなければ写真の彼女から思い付くとは思えないが…。
そうすると…
「う…レイ…ごめんね…。やっぱり…」
ベッドにいたエリスは俯きながら小さな声で謝罪の言葉を述べる…。何も悪くないのに…魔族であることに引け目を感じているのだろうか…。
こういうとき…とるべき行動は決まっている。
ガシッ…ギュッ…
「…!レイッ…」
「エリス…」
俺はすぐに彼女の体を抱き締める…。長い時間触れていなかった…幼なじみの体はあのときとは違う…。
大人の女性へと成長したことを実感できる…。もう…子供ではない…。
「たとえ…エリスがヴァンパイアであろうとも…俺の心はあの時から変わらない…。愛している…」
「レ…イ…ごめん…本当に…会いたかったの…」
「謝らなくていい…もう…離さない…」
「うん…」
ほんの少しの会話の中…俺は誓った…。
エリスを…生涯守り抜く…一人の男として…。
それが俺の生きる道だと…。
最近はモンハンが面白い…!