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98 再び集まるその時まで…

お待たせしました…!頑張るっ!

「クッ…クリス様!冷静な判断を!今ここで…魔王軍の解散など…!」


「そうです!我々が力不足だったのは確かですが…だからといって…ここで逃げるわけには…」


 クリスの衝撃的な発言…。それはその場にいるもの全てに動揺を与えた…。


 無理もない…。せっかくこれから世界に向けて『侵略』しようとしたところだったのだ…。


 それが一瞬にして白紙に…。いったい何が目的なのか…さっぱりなのだろう…。


 …まぁ…俺もさっぱりだけどな。


「…クリス様…。説明をお願いします…!皆も…私にもわかるように…納得できる理由を願います!」


 ティナも少々焦ったような表情を浮かべ…クリスに対して迫る…。


 ティナにしても…クリスの考えがはっきりしないのだろう…。それは当然の疑問だわな…。


 …だが…俺は確信している。クリスはなにも考えずにこんなことを言うようなやつじゃねぇ…。


 絶対に…納得できる理由がある…。


 クリスは…その美しい唇を開き、淀みのない…言葉をそのまま発していく…。


「皆はこのままでいいと思うのか?」


「「…?」」


「おそらく…このまま魔王軍としてハルア教の者達と戦えば…負けるだろう…。それはこの惨状が物語っている」


「「…」」


「今必要なものは力だ。我々には力が足りない…それがはっきりした…。つまり…」


 クリスはそこまで言い終え…一旦目を閉じ…呼吸を整え…その先を口にする。


「魔王軍を解散し…各々力を蓄える…。そして…再び魔王軍を再結成する…それが私の狙いだ!」


「「…!」」


 クリスの言葉に…その場にいる者全てが息をのむ…。


 力が足りない…その致命的な事実に気がつき…理解したんだろう…。


 集団で行動するとどうしても鈍い…。突然襲われても対処するのに時間がかかるかもしれない…。


 特訓して…強くなる必要があるなら尚更…。


 それならいっそ…魔王軍としてのしがらみを一旦解放し…個人で力を身に付ける方が効率的だ…。


 そして来るべき時が来たその時…再びクリスの元へと戻る…。戦うために…。


 ようはそんなところだろう…。


 さすがの皆も…心の中で納得したようだ…。反論の言葉もない…。


「…クリス様…それでは…魔王城は…」


「…空けることになるな…。…なに…どうせハリボテの城だ…。荒らされようが…どうせ問題ない…」


「…はい…」


 ティナも…それ以上は言わなかった…。言ってもクリスの心が変わらないと思ったのだろう…。


 再起を賭けての魔王軍解散…。この思いきった決断がどうなるかはわからない…。


 ただ…俺は皆を信じている…。なんたって…俺とクリスの結婚を祝福してくれたこともあるしな…。


 結束は固い…信頼も厚い…。


 いつか来る…激闘の日にはきっと…皆集まると信じて…。





「…ユキ…私の判断は軽率だと思うか?」


「…軽率じゃねぇだろ…。ただ…クリスにしては思いきったなー…ぐらいは思ったよ」


「ふむ…」


「まっ…なんとかなるとは思うけどよ…」


「まったく…信じているのかいないのか…」


 あれから…話すことのなくなった魔族の皆は…ティナの指示に従って部屋をあとにした…。


 いくらか不安な表情を浮かべる者もいたし…決意を秘めた者もいた…。


 魔王城から完全に撤退するのは3日後…。それまでに必要な物資をそれぞれ集め、各自で力をつけるべく別行動となった…。


 個人で行動する者もいたし…いくらかの小グループとなって動き出す者もいた…。


 末端のメンバーにも今日のことはすぐに伝わるだろうな…。変な混乱にはならないだろうが…驚きはするか…。


 そう思うと…本当に魔王軍が解散するのか…信じられなくなりそうだ…。


 そんな風に…いくらか考えていた俺を見つめてクリスが口を開く…。


「…ユキ…すまないが…」


「…ん…?」


「…抱き締めてもらえないか?」


「…おっ…お…う…。突然だな…」


「う…む…。なぜだかな…今になって不安になってきて…だな…」


 …クリスも…心のどこかで心配になってたのか…。こーいうとこはか弱い女の子だわな…。


 いつもならここで…下らない茶々を入れるとこだが…。


「…ん…」



 ギュッ…



「…ユキ…」


 何も言わず…ただ抱き締める…。ベットの上にいるクリスはホンの少し暖かく…吐息はか弱い…。


 一時は死の淵をさ迷っていたのだ…。こーいうときに元気付けなきゃな…。


「ずっと…こうしてくれ…ユキ…」


「おぅ…」


 俺は…いったいどれくらい時間が経ったかもわからないほど…クリスの側を離れなかった…。


 まるで…一生を過ごしたような…そんな気分になるほどに…。

第2章もあともう少しのはず…!

最後まで…全力で走るのみ!

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