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96 状況把握

「…みんな…集まったのね…。さっそく…現状の報告を始めるのね!」


 あれから…。


 あまりにもショッキングな光景…そして辛い現実を目の当たりにした俺たちは、魔王城の会議室…とやらに集まっていた。


 進行役は…魔王軍三幹部の中でこれといった大ケガのないティナが受け持つことに…。


 フィールもメーラも…あんな状態だと復帰するのはもっと先になる…。特にメーラは…あまりにもひどい状態…。最悪…回復の見込みも厳しいかもしれない…。


 現に…今もメーラは大規模な治療を受けている。元がアンドロイドだからなのか…普通に治すのは困難を極めるらしい…。


 ちくしょう…俺は何も守れなかったってのに…。


「…ユキ!そんなに落ち込んでいると困るのね!しっかりするのね!」


「…あぁ…わりぃ…」


「…気持ちはわからないでもないけど…今はこれからの事を考えるのね!」


「…そー…だな…」


 俺の暗い様子に…ティナも厳しい言葉を投げ掛ける…。こういうときは頼もしいな…幼女だけど…。


 今…この部屋にいるのは俺と…ティナと…レイヴォルト…そして、何者かの強襲を受けて無事だった数名の魔族…。


 幸運にも…死者はいないようだった…。相当な大ケガを負った者もいたが…とりあえずは不幸中の幸いってとこか…。


「まずは…この魔王城を襲った者を把握したいのね…。とりあえず…知ってることがあれば教えてほしいのね…」


「「はっ…はい…」」


 ティナの呼び掛けに…少々緊張気味の魔族達…。それぞれメイドさんだったり…衛兵だったりと様々…。


 額に包帯を巻いてる者もいるが、話す分には問題なさそうだ。


 まず…口を開いたのは垂れ耳ぎみな獣人メイドさん…。


「私が見たのは…メーラ様と襲撃者の戦いでした…。その時の会話もある程度…。相手は白い髪を持った子供…男児だったように記憶しております…」


「…他には…何かないのね?」


「は…はい…その…子供の名前は…トム…だったかと…」


「…!…なるほどなのね…」


 …?なんだ?ティナのやつ…妙な反応したよな…。変な感じがするが…後で尋ねたほうがいいか…。


 獣人メイドさんのあとは…二本の角を生やした厳つい兵士が説明をする…。


「…某は…二人の戦闘の一部始終を…。メーラ様の一撃が襲撃者の顔を吹き飛ばした…と思ったのですが…」


「…どうなったのね?」


「はい…。いつの間にか襲撃者が…傷ひとつなく復活し…氷柱でメーラ様を貫いたのです」


「ふむ…わかったのね…」


 …ここまでの話から察するに…トムとか言うやつの騙し討ちが、メーラを苦しめたわけか…。


 致命的なダメージを受けても復活するとか…。想像以上にヤバイやつだ…。アンドロイドのメーラとしては…相手が厳しすぎたかもしれない…。


「あの…ティナ様…」


「…?どうしたのね?」


 そんな中…おずおずと手を挙げた者が一人…。眼の紅いトガケみたいな顔を持った魔族…。人型が多い中では珍しいな…。


「その…トムと名乗った敵に関する内容ですが…会話の中で聞いたんです…。ハルア教…五大教皇の『快楽』だと…」


「「…!」」


 …そういうことか…!『欲望』…パルバリーナのクリス殺害が上手くいかなかったから…その後始末をするために仲間が魔王城に…。


 そう思ったのだが……


「しかも…『快楽』…トムの狙いは…その…ティナ様にあると…」


「…?どっ…どういうことだ?なんで…ティナが…」


 トカゲ魔族の思わぬ言葉を聞いて…俺はつい疑問を口にする…。話の流れがおかしな方向になってる…。五大教皇の間では目的は一致してないのか…?


 そんな風に思った俺の言葉に…


「えっと…その…」


「…どうしたんだ?」


「…あまり口に出せるようなことでは…」


 突然…歯切れ悪く喋りだすことに…。まるで…あまり口にするのも恐ろしい…というような様子だ…。


 そーなると…余計に気になるんだが…。


 だが…当のティナは…


「別に言いたくないならいいのね…。あまり…聞きたくないのね…」


「…?なんだよ…知ってるのか?トム…とかいう奴のこと…」


「…悪いけど…ここで言うわけにはいかないのね…。今度…話すのね…」


 珍しく…表情を険しくしながら俯くティナ…。どうも訳有りなようだ…。


 どーも…襲撃者…トムと関わりがあるようだが…今は置いておくしかない。話が脱線するとややこしくなるしな…。


「わかったよ…そこまで言うなら深追いはしねぇよ…」


「助かるのね…」


 その後も…負傷者の様子やら…これからの活動…といった話を進めていくことに…。


 …といっても…今の状態だと前向きなことを話し合うことはできない…。せいぜい…何人の負傷者がいるか…魔王城から撤退するか否か…ハルア教の動向…ぐらいか…。


 いや…全部が全部悪い話でもないな…。…一つだけ…吉報があった。それが…


「つまり…クリス様とウザインはまだ帰ってないのね?」


「はい…」


「なるほどなのね…とにかく…クリス様が騒動に巻き込まれなかったのは良かったのね…」


 そう…一番に気になっていたこと…。クリスとウザインがまだ帰ってないことがはっきりした…って所だ…。


 もちろん…無事かどうかわかんねぇのは不安だが、トムの襲撃から回避できたのは良かったぜ…。


 クリスだってまだ…パルバリーナから受けたダメージが残ってるはず…。そんな状態でトムと戦えるわけねーし…。


 今はこの城へ向かっていることを祈るしかない…か…。


「ふぅ…とりあえず…状況はなんとなく掴めたのね…」


「あぁ…あとはクリスとウザインが帰ってくるまでどうするか…だな…。レイヴォルトはどうする?」


「そうだな…エリスの様子を見に行くよ…。まだ…安心はできないからね…」


「そっか…なら今からでも行った方が…」


「すまない…少し失礼する…」



 タッタッタッタッ…ガチャッ…パタン…



「さて…皆も疲れたと思うのね…。各々…ゆっくりするのね」


「「はっ…はい…ティナ様…」」


 こうして…あらかたの話し合いも終わり、一時の休憩へと移行しようとしたその時…



 バァンッ…!



「テッ…ティナ様…!ユキ様!ご報告です!」


「「…!?」」


 突然…鎧に身を包んだゴブリン風の魔族が入ってきた…。


 息を切らせているとこ見ると…かなりの緊急性か?


「どうしたのね!?」


 ティナの催促に…ゴブリンは焦りながらも素早く答える。 





「クリス様…そしてウザイン殿が帰還いたしました!」

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