94 脅威から逃れて…
3日お休みはゆっくりできたんですが…明日からまた大変なお仕事ですね…
タッタッタッタッ…
「…エリス…すまない…」
「…」
なんとか撒いたか…。さすがに…かつての師との戦いはかなり疲弊する…。
『リクリィアル』…『天聖五剣』に数えられる聖剣の一つ…。まさか…こうして救われるとは…。
ルカルの光を浴びたエリスは、気を失った状態で俺の腕の中にいる。そのおかげか…こうして抱えながら走っても飛び起きるようなことはない。
本当は…彼女に危害は加えたくなかったが…やはりルカルの力は絶大…。普通は抗うことはできない…。
後でゆっくり看病しなくてはな…。
『リクリィアル』…その元の主であるフェルデリカにはルカルの影響はないだろう…。聖剣は基本的に…かつての持ち主には力を及ぼすことはできない。
もちろん…攻撃する分には問題ないが、神獣の力を発揮することはできない…。おそらく…今もピンピンしているはず…。
…まぁ…ルカルの光は強烈だから、逃げるだけの余裕はあったが…。
とはいえ…こうしてエリスと再会…そしてフェルデリカからの脅威を逃れたのは良かった…。本当に…良かった…。
「さて…それよりも…」
これからのことを考える必要がある…。エリスのこともそうだが…グリンシュテン王国から身を引いたのだ…。当然…今までのような生活はできない。
エリスと共に…魔王一派との共同戦線といくべきか…。ハルア教の面々もついに動き出したのだ…より危険な戦いに身を投じる必要がある…。
いや…その事について考えるのはエリスが目を覚ましてからにしよう…。まだ…魔王…クリスや少年…ユキについてよく知る必要がある。
それからでも遅くはないだろう…。
タッタッタッタッ…
「静かな森だな…」
そう言いながら駆けること数分の間…エリスを助けるまでのことを再び思い出す…。
ー
…
『…!ユキ!ティナさん!誰か倒れている…!』
『おん?…あっ!あいつは…フィールじゃねぇか!』
『ホントなのね!早く助けるのね!』
陸へと上がって…そのまま目的地…『リヴリィア帝国』へと向かっていた俺たちは…倒れている魔族を発見…。ぐったりしている様子から危険な状態であると判断し…すぐに駆け寄る。
タッタッタッタッ…
『おい!フィール!こんなとこでどーしたんだよ!』
ユキの掛け声に…意識の定まらない様子のフィール…。呻き声をあげながら…うわ言のように呟いた…。
『アッ…アリ…ス…早く…逃げ…ろ…』
『…!…ヤバい…!ティナ!とりあえず…フィールのこと頼めるか!』
『…ユキ!どうしたのね!何を焦ってるのね!』
一筋の汗を流し…途端に切羽詰まった様子のユキ…。彼はとにかく急いで説明をすることに…。
『襲われたんだよ!フィールとアリスは…!でも…フィールを見逃してるってことは…今はアリスがアブねぇ!!』
『…!そういうことなのね!マズイのね!』
『くっそ…!どこにいるかわかれば助けるのに…!』
この二人の様子…どうやら『アリス』…という人物…もしくは魔族が危険な状態にあると考えているようだ…。
詳しいことはわからないが…ここは…
『…アリス…という者を助ければいいのだな?』
『…!レイヴォルト!アリスについては説明しねぇと…』
『ユキ…困っているときは助ける…そこに理由は必要ない。とにかく…急ぐ必要があるなら…私が行こう!』
『…!あぁ!頼む!説明はあとでするからよ!ティナ!なんか…アリスを追跡できる魔法とか…』
『わかってるのね!ちょうど…使える魔法があるから…それをレイヴォルトに付与するのね!』
こうして…俺は一目散にアリス…エリスを助けに向かった…。かつての師…フェルデリカと相対するとは思いも知らずに…。
ー
…
タッタッタッタッ…ザッ…
「…さて…ユキたちは…流石にいないか…」
もといた場所…フィールのいた所には誰もいない…。仕方のないことか…あんな状態だ…。どこかに避難しているのだろう…。
最悪…フェルデリカに再度強襲される恐れもある。なんとかして…どこにいるかだけわかればいいのだが…。
…ん?この違和感…
「なんだ…?何か…見落としているような…」
そうして…何の気なしに周りを見回すと…
「おい!レイヴォルト!こっちだ!」
「!…ユキ…!」
「『潜伏スキル』だ!とにかく…こっちだ!」
俺のいた位置から前方数クォーツ程の場所…そこからユキ…そしてティナさんとフィールが現れる…。
なるほど…潜伏スキルか!使用者に触れていれば数人同時に使える…。フェルデリカから身を隠すこともできる…わけだ…。
「ユキ…すまない…とりあえず彼女…エリスを助けることで遅れた…」
「ん?エリス…あぁ…そういうことか!とにかくよかったぜ…」
「フィールさんの様子は?」
「ぐったりしてるが…ティナの魔法でなんとか大丈夫だ!とりあえず…こっから一気に飛ぶ!」
「わかった!」
俺はエリスを抱えたままユキたちの元へ…。すると…ティナさんが両手で魔方陣を描き…指示を出す。
「今から…魔王城に飛ぶのね!しっかりティーの手を握るのね!」
なるほど…転移魔法…。どうやら…ティナさんは想像以上に魔法を使うことに長けている…。監獄で魔法の制約がなければ…脱獄は簡単だったかもしれないな…。
そう考えたあと…ユキたちに近づき…ティナさんの手を握る。
そして…
フォンッ…!
俺たちは一瞬でその場から転移することになった…。その先で…恐ろしい現実が目の前に広がることを知らずに…。
失敗しないように気を付けねば…!