91 『殺意』の襲撃②
うぇーん…(ToT)
台風辛い…
ハルア教…『殺意』…!まさか…ここでとんでもない奴に出会うとは…。
世界中にありとあらゆる悪行を行う反社会的集団…ハルア教…。そしてその頂点に立つ五人の指導者…五大教皇…。
その五人の中で特に有名なのが『欲望』と『快楽』…。それぞれ被害の大きさは尋常ではないらしい…。
そして『絶望』…さらには『殺意』…。この二人についてはそれらしい情報が確認されていない…。
本当にいるかどうかも怪しかったが…目の前にいるのが…『殺意』!
「…フェルデリカ…だったか…。お前の目的はなんだ?ハルア教とやらに関係しているのか?」
私は目の前の女…フェルデリカへと尋ねる…。ろくでもない集団を率いるほどの人物…。真っ当な理由など期待はしていなかったが…アリスが狙われたのが気になる…。
まるで…アリスの過去まで知っているかのような口ぶり…。何を語るのか…。
「…?フェルにとっては『レイ』だけが全てだよ?その『レイ』を堕落させようとする…そこの女の子を殺したい…ただそれだけ…。ハルア教は関係ない…かな?」
「『レイ』…だと?」
なんだ…こいつの言う…『レイ』という言葉…。どこかで聞いたことがある…。遠い昔のことになるような…。
そんな私の考えより先に…思い当たる節にたどり着いたのはアリスだった。
「…『レイ』…!あなた…『レイ』を知っているの!?」
アリスにしては珍しく動揺している…。まるで…自らの秘密を暴露されたかのような…。
私は一旦アリスを腕から下ろすと、その真意を尋ねることに…。
「アリス…『レイ』というのは…」
「フィール様…私たちが初めて会った時のことを覚えていますでしょうか?」
「…!そうか…!思い出した…!」
そう…アリスと初めて会話したときのことだ…。
『それで…レィに…会えるなら…!』
あのときのアリスは…必死になって言葉にしていた…。会いたいと…。『人間をやめる』ことになっても…。
そういう経緯もあって…今がある…。
つまり…『レイ』は…アリスにとって大事な存在であり…そして…
「…フェルデリカ…お前にとっても…『レイ』とやらは…」
「うん…フェルにとっては大事…。男としても…弟子としても…ね…」
「…?弟子…?」
「…そこの女の子…『レイ』と引き離すのに手間かかった…。そのあとに…フェルが『レイ』を強くしたの…。だから弟子」
…話がこんがらがっているな…。理解するのに苦労する…。フェルデリカから詳しく聞くことはできそうにない…。
とにかくここは…
「アリス…今すぐに安全な場所へ!あとから色々と聞いておきたいこともある…」
「フィール様…お気をつけて!」
タッタッタッタッ…
一旦アリスを避難させる…。フェルデリカ…『殺意』の実力は未知数だが、アリスを守るため…私が戦うしかない…!
「あっ…逃げちゃった…」
「…お前の相手は私だ…!」
「フィール…メルリアーノ…。あなたは関係ないでしょ?」
「お前がアリスを狙うなら…それを止める…。当然だ」
「そう…後悔しても知らないよ…?」
そう言った直後…
ヴォン…!
「…!その剣は…!」
突如…フェルデリカの右手から蒼白い光が…。それは鋭い剣の形を作り上げ…やがて…
キィィィ…ン…
「…すごいでしょ?『天聖五剣』…。世界に五つ存在している最強の剣の一つ…『サピロス』…」
「…『天聖五剣』…!」
「それぞれ形をとらず…持ち主の意思によって顕現する…。『サピロス』の力は世界を相手に戦えるほど…」
…どうやら…この女…ただ者ではない…!『天聖五剣』はその存在さえほとんど伝えられていなかった…伝説の存在…。
私でも…この目で見たことは一切ない…。
だが…今、目の前にある『サピロス』…。煌々と輝く様は見事であるが…恐ろしく危険な代物だと直感する…。
あれに切られて…生きていることができるかどうか…。
「それじゃあ…始めるね?」
「…!」
フェルデリカの開戦の合図…と同時に…
シュッ…ズバッ…!!
「くっ…!」
一瞬…私との間合いを詰めると、『サピロス』の一閃が…。
すんでのところで後ろへと退避したが…
プシュッ…!
「ちっ…!」
右手首に紅い筋が…。致命傷とはいえない…ほんの小さな傷…。そこから…一滴の血が滴り落ちる…。
ポタッ…
「…残念…。右手を切り飛ばすつもりだったのに…」
フェルデリカの落胆したような声…。その目は落ち着き…それでいて冷酷…。さっきまでのとぼけたような表情ではない。
『殺意』の名を持つだけのことはある…。
「…ふん…まさか…今のが全力ではないだろうな?まだ…実力を隠しているようにも見えるが…」
「そうだね…正直…今のあなたなら3割位でいいかも…」
「なんだと…?」
フェルデリカの挑発…。相手を怒らせる意図があってのものだろうか…。
いや…ある意味的を得ているかもしれない…。今の時間帯は夕方を過ぎる頃…。ヴァンパイアとしての真価を発揮するには不十分…。
今の私では確実に勝つには難しいかもしれない…。
それでも…アリスのために…時間を稼ぐ必要がある!
「ふん…挑発のつもりだろうが…私を甘く見てもらっては困るな…。ヴァンパイアの力は弱くない…!」
「うん…知ってる…。でも…右手見て?」
「…?…!」
フェルデリカからの指摘に…私は一瞬言葉を失ってしまった…。
先程切られた部分…右手首の切り傷から、蒼白いモヤのようなものが溢れていたからだ…。
血ではない…。これはいったい…!
「貴様…何をした!」
「『サピロス』は相手の体だけでなく…生命力…ラマをも切り裂く剣…。『サピロス』に切りつけられたら最後…ラマを垂れ流すことになる…。フィール・メルリアーノ…ラマが尽きる前にフェルを倒せるの?」
これが…『天聖五剣』の力か…!なるほど…恐ろしい力だ…!
一度でも傷つければ…あとは相手のラマのじり貧を狙うわけか…。これは…厄介だな…。
だが…ここで逃げるわけにはいかない!
「関係ないな…お前の力が強かろうと…私に戦いを放棄する理由はない!仲間を傷つけようとする愚か者は…私が許さん!」
その言葉と同時に…
ダッ…ビュンッ…!
フェルデリカへと一直線に飛ぶ…。
再び激闘が始まる直前…彼女が一言つぶやく。
「…フェルも…甘い戦いはしないよ?」
そして…蒼い閃光が輝き出した…。
第2章…10万文字を狙ったけど…予想以上に多くなった…