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90 『殺意』の襲撃①

遅れました…すみません…


「フィール様…どうかされましたか?」


「…ん…いや…なんでもないぞ…アリス…」


 リヴリィア帝国を後にして数時間後…私は言い様のない不安を抱いていることに気がついた…。


 魔王…クリス様の容態…ユキの安否…。そういった災難以外にも、気になることがあったのだろうか…。


 …いや…今は深く考えないでおこう…。まずは状況把握だ。そのためにこうして向かっているのだから…。


 アリスと共に竜車に乗り、魔王城へと出掛けるのは久しぶりになる…。いつも国のこと…民のことに気が向いていたからだろか…。


 …それだけではないな…。以前からクリス様との関係はややあっさりしていたのも原因の一つだろう。


 有事の際は協力する関係ではあったが、こちらから連絡をとることはあまりなかった…。


 ヴァンパイアとしての誇り…意地があったかもしれない…。


 そう思うと…私も大分丸くなったな…。まぁ…あの人間…ユキのお陰でもあるが…。


 

 ガタゴト…ガタゴト…



「このペースだと…あと一日で魔王城に到着するか…。アリス…体調は大丈夫か?」


「はい。大丈夫です。最近はストレスも感じませんし…」


「そうか…それなら良かった…」


 アリスは病弱な体質ゆえ…長期間不安定な環境下に置くことはできない。できれば早めに…今回の問題を解決したいところだが、そうはいかないかもしれない…。


 私が魔王城に着いたとしてどうなるか…。メーラやティナは今も忙しいだろうに…。


 そう思ったその時…



 ガタゴド…ザッ…



「む…?突然止まったようだな…」


「何かあったのでしょうか?」


 さっきまでスムーズに進んでいた竜車が突然の停止…。乗り場から一旦席をはずし、竜を従えている男に尋ねてみる…。


「どうした?何かあったのか?」


「フィール様…それが…前方に魔族の者が寝転んでまして…」


「…なんだ…そんなことか…。道は広いだろう。普通に避ければよい」


 この夕方にはた迷惑な…。どういう神経をしていれば、こんな道のど真ん中で寝られるのか…。


 仕事疲れか…ただの酔っぱらいか…。しかも私たちと同じ魔族…。叱り飛ばしたい気持ちだ…。


 だが無理して関わる必要もない。そのまま通りすぎればいいだけのこと…。


 だが…


「フィール様…それが…竜も進まないようでして…。さっきから立ち止まって警戒してるようなんです…」


「何…?」


 不思議な現象だな…。今私たちを引っ張っている竜…『ヴァルトス』は利口な種族…。


 体長はそれなりに大きく…それでいて思慮深い。獰猛な魔獣と違い、戦闘の際は相手の力量を計る性質がある。


 それ故…強敵に対しては慎重になるわけだが…。


「…寝転んでいるものは何をしている?『ヴァルトス』が警戒するなら武器でも持っているのか?」


「いえ…丸腰で普通に横になっています…」


 …ますます気になるな…。ただの酔っぱらいというわけでもない。これは確認するべきだ…。


 私は一旦竜車から降りると、前方…その寝転んでいる魔族へと近づいてみる…。



 タッタッタッタッ…



「…おい…。ここで何をしている?」


 意味がないかもしれないが、声だけはかけてみる…ものの…


「…すー…」


 起きないか…。全く…よほど寝ることに集中している…。


 しかし…この魔族…何者なんだ…。


 赤茶色の長い髪の毛を持ち…やや長めの耳が生えている。おそらくは…獣人の一種か。種類としては…狼系だろう…。


 美しい顔…すらりとした体…。さらにくっきりとした目鼻立ち…長い睫毛にも心奪われる…。性別は女性…。寝ている様子は恐ろしいほどに様になるな…。


 衣服は妙に露出が激しい…。下手をしたら邪な男共に襲われかねない…。


 気乗りはしないが…無理やり起こしておくか…。『ヴァルトス』の警戒もあるから、変な争いにならぬよう気を付けておこう…。



 トントン…ユサユサ…



「おい…こんなところで寝ていては困るな。寝るならもう少ししっかりした宿にでも泊まることだ」


「う…うーん…ふぁ…あ?」


「…やっと起きたか…」


「あ…あー…ん…ごめんなさい…」


 妙に素直な奴だな…。逆ギレでもされるかと警戒していたが…。


 とろんとした表情は特に驚異を感じない…。まさに今起きたばかり…寝起きの状態だ。


 穏便にここを立ち去ってもらうか…。


「悪いが…ここを通してもらう。別にいいだろう?」


「んー…うん…いいよ…。フェルも…スッキリしたし…」



 スッ…パンパン…



 フェル…と名乗った女はその場で立ち上がると、土まみれの腰をはたく…。


 ふむ…なかなか身長が高い…。1.8クォーツはありそうだ…。成人女性としてはなかなかなもの…。今の私であれば見上げるほどの高さだ…。


 そんな風に思っていると…



 タッタッタッタッ…



「フィール様…大丈夫ですか?」


 アリスが心配そうな表情で近づいてくる…。私が目の前の女性と口論でもするのでは…と気になったのだろう…。とりあえず安心させるか…。


「問題ない。今説得が終わったところでな…。すぐに退いてくれるようだ」


「そっ…そうですか。それは良かったです…」


 アリスのほっとした顔を見ると、自然とこちらも嬉しいものだ…。


 さて…竜車に戻らねば…





















「…あ…生きてたんだ…じゃあ…死んでね」





















「…!!アリス!伏せろ!!」



 ブォンッ…ズシャッ…!!



「…!!?フィール様…!」


 一瞬の出来事…。恐ろしい殺気…それが伝わった瞬間、私は反射的にアリスを抱えてその場から退避した…。


 危なかった…。ワンテンポ遅れていたら私を含め、二人とも殺られていた…。


 今のは…斬撃…。それも鋭いもの…。その中心にいたであろう…フェルへと睨み付ける。


「どういうつもりだ!なぜ…突然襲ってくる!」


 フェルは相変わらずの表情で…こちらを見据えながら、さらりと返事をする。


「…だって…その子が生きてたから」


「…?」


「アリス…だっけ?名前は違うけど…フェルにはわかる…。あなたは…殺さないと…」


 アリスだと…?この獣人…何が目的でアリスを…!


「何者だ!貴様…許されると思うな!」


 私の激昂にも動揺することなく…フェルは自らの正体を明かした…。


「ハルア教…『殺意』…フェルデリカ・シャパン…。『レイ』のためにも…君たち皆…殺しちゃうね?」 

お仕事大変…がんばります…

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