彼の背中に近づきたい-15
私は、途中のスーパーで3人分のおつまみとワインを買う。
2人は、ビールを飲んでるだろうけど、今日は深酒しないですぐに帰るつもりだ。
少し気分が軽くなる程度酔って、早坂さんとこに行こう。
「こんばんは」
絵梨の部屋のベルを鳴らしたら、小野君が迎えてくれた。
ちゃきちゃきっとした下町風のおしゃべりな絵梨と、対照的で落ち着いた彼。
絵梨の間髪いれずにまくし立てるようなおしゃべりに、よくついていけるなって思う。
ちぐはぐなのは、私も志賀くんも一緒だけど。
「友芽?さっさとこっち来なよ」
私は、こっそり志賀くんが隠れてないか部屋の奥の様子をうかがった。
志賀くんがいるわけなかった。
「これ、買ってきた」
「ありがとう。よかった。から揚げに、たこ焼き、食べるものあんまり用意してなかったから助かる」
「急に押しかけちゃったから…」
絵梨は、飲みだすとあまり食べる方ではない。だから、小野君と2人で3人分食べようと思ってたっぷり買ってきた。
「いいよ。友芽が遊びに来てくれるって、あんまりないじゃん」絵梨は、喜んでくれる。
「そうだったね」
今まで、早坂さんを優先してたし、志賀くんとは親しくなる前に…
「何よ…いきなりため息ついて」
「うん…」
これが最後かも知れないなんて。
「宗佑とうまく行ってるんだって?」
ビールを渡される前に、小野くんに言われて涙ぐむ。
どうしよう…いきなり直球食らっちゃった。
「ほんとバカだね、男って。いいから、友芽気にしないでとりあえず飲みな」
「おい、俺なんかまずいこと言ったか?」
「何にもなきゃ、友芽が約束もなくふらっと来るわけないでしょ?ほら、友芽泣かせた。顔見りゃ分かるだろうに」
「そうかなあ。いつもとかわらないぞ」
「鈍感、アホ」
「絵梨、止めて。小野君が悪いわけじゃないから」
「ねえ、宗佑になんか言われたのか?」
小野くんが構わず聞いてくる。
「いい加減にしなって」絵梨が小野くんに向かっていう。
「いいの。絵梨。私…志賀くんとこ出てきたの。それを伝えたくて…」
「出てくって…どうしたの?引っ越すってこと?」
「うん…引っ越すと言うか、元に戻るというか。早坂さんのところに行こうと思ってるの」
「へっ?なんで」小野君が驚いていった。
「早坂さんって、来月から関西だろ?」
「早坂さんに、ついていくつもり」
「どういうこと?」
2人で顔を見合わせる。




