彼の背中に近づきたい-10
「さっきのこと、志賀くんのことと関係あるの?」
関口さんは、私が言ってることを理解しようとしてくれようと、質問をいくつもしてくれる。
私は、単純な女だ。お腹が満たされると、死にたいほど恥ずかしいって気持ちも、だいぶほぐれてきた。
私は、関口さんに、これまで話してないことを話した。空き巣は、単なる泥棒じゃなくて、ストーカーだってことと、早坂さんとは恋愛というよりお互いに必要だったから一緒にいることも。
「だから、私には、住むところがないんです」
志賀くんに軽蔑されたことは、伏せてあるからいまいち切迫感が伝わってない。
「引っ越せば…ああ、そっか」
「無理なんです。関口さん。私、一人で住もうとがんばったけど無理なんです」
志賀くんに軽蔑されたのに会社で、会うかも…ああやっぱり、無理。
「それで?」
「私、早坂さんに付いて大阪に行きます」
本当は、地球の裏側まで行きたい。
「ちょおっと、どういうことなの…」
「名前も、電話番号も、会社のことも、志賀くんのことも、みんな相手に知られてるんです。実家に帰るのは、考えていません。早坂さんは私のこと分かってくれてます。彼もそうしろって」
「ちょっと待って、宗佑にそのことちゃんと言った?」
「いろいろあって、彼、話を聞いてくれないんです。それに…拒絶されたのに、彼と一緒には住めません」
出来れば、志賀くんから出来るだけ遠くに行きたい。もう二度と彼に出くわさないところがいい。
「ねえ、会社辞めるって決めてるの?課長に報告するの一日待ってくれない?」
「早坂さんと話し合ってから…」
「そっか。少し時間をちょうだい。あの、バカ何とかしないと…」




