彼の背中に近づきたい-5
「ん…友芽」不意に名前を呼ばれる。
「はい…」
ぐいっと腕を引っ張れ、引き寄せられる。私は、彼の体の上に乗せられて大好きな腕の中にいる。
「友芽?…ああ友芽だ…」
あの時のように、彼は私を胸に抱いている。
「友芽…」
嘘みたい…彼に抱きしめられてるなんて、夢じゃないかと思う。
彼の指が、伸びてきて私の頭をつかまえた。
もう一度、名前を呼ばれ、彼は私に、そっとついばむようにキスをする。
「んん…」
これは…現実?本当にキスされてる?
おしりをつねりたいくらい。
し、しが…志賀くんからキスしてくれてる。幸せ過ぎて死にそう…
あっという間に体をひっくり返され、今度は、強く唇を押し付けられた。
何?
何が起こってるの?
もう、ダメ。心臓が飛び出しそう。
志賀くんが私の上に覆いかぶさって、全身志賀くんに包まれてる。
力強い腕でぎゅっと抱きしめられ、あまりのことに意識が遠のきそう。
「友芽…」名前を呼ばれて、答える間もなく彼は私の体に唇を押し付けてくる。普段彼が見せない、男らしい荒々しさで欲望を向けてくる。
なんで?どうしたの?
手加減しない欲望のままのキスを受けて、頭の中のものすべて溶かされたみたいに何も出来なくて、彼にしがみついていた。こんなの続けてるとどうにかなりそう…
志賀くんのキス…ほかの人のキスと全然違う…好きな人のキスって…なんて素敵なの…
志賀くんの…予想外の情熱的なキスに、何も考えられない…
唇が離れていく。
いや。止めないで。もっとキスして。
私は彼にしがみついて、キスをねだる。
「志賀くん?」本当に志賀くんなの?
別人みたい。でも、嬉しい。
志賀くんの息が上がってきた。




