8/113
事件ー8
1階に着いて扉が開いた。
新人君は、私が逃げ出さないように、私を壁に押し付け、口を手で塞いでる。
力いっぱい抵抗したけど、狭い部屋ではどうしようもなかった。
「誰かいるのか?」
駄目だと思った時、男の人の声がした。
なぜか、志賀くんがそのエレベータに乗ってきた。
「おい、何やってる!!」
彼は、異変に気づいてその男の子をつまみ出し、襟首をつかんだまま男の子を放り投げた。
「警備につきだしてやる」
「ごめんなさい…きれいな女性とと二人きりになってつい…もうしません…せっかく入った会社なのに…親に知られたら、ああ…死にたい」
「友芽?」
彼は、どうするか私に聞いてるのだ…
男の子は、必死に頭を床に擦り付けて謝ってる。
「ごめんなさい…友芽さん。怖がらせて…俺…友芽さんと二人きりになれて…訳が分からなくなって…こんなことしちゃって」
私も、会社の中で騒ぎを起こしたくなかった。
みんなに知られるのは、痴漢行為をしたこの男よりも、避けたいことだった。
「もう…いいわ」