事件ー6
その日は、会社の同期の五人と仕事帰りに飲んでいた。
私達の会社は、中堅の食品メーカーで、加工食品類、スパイス&シーズニング、スナック類を扱っている。
同期の五人とは、私と絵梨、営業の西田君、同じく営業の絵梨の彼の小野君。
それに、いつも一人でしんみり飲んでる癖に、なぜか付いてくる開発部門の志賀君。
この五人で飲むのは、珍しいことじゃなく、時々、誰かが思い出したように仲間を募って、適当に騒いで日頃のうさを晴らす。
そんなことが、定期的に続いていた。
いつも、同じ顔ぶれのメンバーで集まって、その後、二次会に行くのも、そのときの雰囲気、飲みたい気分じゃなかったら家に帰るのもありで、気軽な付き合いだった。
飲み会も終わりという時になって、絵梨がいつものように仕切ってる。
まだ、飲む者、帰る者と適当に振り分ける。絵梨は委員長みたいにてきぱきと物事を決める。
だから私のように踏ん切りが付かなくて、うだうだ悩むこと無いんだろうな。
「友芽はもう帰りな」
「はい」
審判が下った。絵梨の言う通り、今日はもう帰ろう。
小野君と西田君に慰められて、甘やかされたけど、私の気分は浮上することなく少しもよくならなかった。
なにをしても嬉しくないし、何をしても楽しくない。
私は、不幸の原因が志賀くんにあるような気がしてきて、彼をきっとにらみつけてみた。
志賀くんは、絵梨の話に頷きながらビールを飲んでいる。
まあ、志賀くんに『さっきは、ごめんね』なんて謝られても困るけど。
「友芽は、今日はもう帰れよ。まっすぐ帰れるか?」
良い子だからって、ニュアンスで小野くんにも言われた。
小野くんだなんて、軽くため口きいてるけど、彼は、浪人と留年両方してるから、志賀くんと同じ2つ年上だ。とても落ち着いている。
「ん」
私もそうするつもりだった。
私と志賀君が、二次会には参加せずそのまま帰ることになった。