私って、何?-6
早坂さんは、決まり悪そうに話してくれた。
「取引先の担当者が、女性で俺に誘いをかけてくる。
だから、今俺、彼女の誘いを断るのにすごく苦労してるんだ。
この間も、適当に見繕った女、恋人だって連れていったんだけど、まるで認めてくれないし。
このままじゃ、仕事に支障をきたす。
君のほうもああいう男が来たら、俺の名前出してくれれば、後は何とかするから。
彼女も、君ぐらい目立つ女を連れて行けば、納得してくれる…俺に付き合うつもりはないと分かってくれると思って」
早坂さんは、目立つ人だった。
その時の私からすれば、すごくやることがスマートで、洗練されてて雲の上の人に見えた。
容姿はもちろん非の打ち所がなく、行動もスマートで仕事もできるのに、ギスギスしたところがない。
社内でも付き合ってる人はいないって言う噂だったから、私なんかよりもっと苦労してたんだろうなという想像はすぐについた。
私は、そんな人に付き合って欲しいって言われて、舞い上がってしまった。
憧れの人に付き合ってと言われて、彼の言う意味をよく考えなかった。
彼は、優しかった。
何でもしてくれたし、大事にしてくれた。でも、なにかが違った。
深いところでつながるのを拒まれた。近づこうとすると、いつもどこかで線を引かれる。




