同居ー21
すっと、指が伸びてきて、私の地図を横からさらった。
背の高い、よく髪型を気にしてるような男だ。
「地図、見方分かりますか?
向きが逆ですけど…」
すでに、私が買い物をした袋がひとつ、男の腕にしっかりぶら下げられている。
男は、にやけた笑いを私に向け、さっと値踏みするような視線を向ける。
「いえ、本当に大丈夫ですから。返していただけますか?」イラつき半分の笑顔を向ける。
「結構、重いですよ」笑ってる割りには、頑固に手を離そうとしない。
「っていうより、あなた誰ですか?」
「失礼しました。これ、私の名刺です」
私は、もらった名刺を受けとる。
「確かに、この辺り分かりにくいな。案内しましょうか?」
「結構です。それより荷物と地図、返してください」
紙を取ろうとすると、私の手の届かない所に持ち上げられる。
「この辺りの地図だね。
彼の家までの…地図か、見ながらってことは彼の家かな?今日が初めて?」
「どうでもいいでしょう?」
「連れてってあげる。さあ、行こう」
男は私の買い物袋を持ったまま、先に歩き出した。
「ちょっと、待って。そっちじゃないでしょ?」
T字路に差し掛かって、男が別な方向に曲がろうとした。
「近道なんです」
「買い物袋、返して」
「一緒に来たら返してあげる。俺のうちのほうが近いし」
「もういいわ」
にんじんも玉ねぎもなくたって。
くるっと向きを変えて、多分、こっちだと思われる道を歩く。




