同居ー19
― 仕事何時に終わるの?
メールをしても、電話を掛けても、志賀くんからは、一切返事がなかった。
もとから、マメじゃなさそうだしな…
今日は、定時で上がって関口さんと帰る。なんと、里奈ちゃんと山本さんにお先に失礼しますなんて言って。
「たまには、いいんじゃない?」と関口さん。関口さんとは、新宿駅まで一緒だった。
駅まで歩く道のりで、関口さんに聞いてみようと思った。
「あの…1つ聞いていいですか?」
「いいよ、何?」
「関口さんって、結婚していらっしゃるんですよね」
「ええ」きょとんとしてる。仕事以外のこと聞くの珍しいから。
「えっと、あの、毎日、献立ってどうやって決めてるんですか?」
関口さんの目が、さっきより、もっと大きくなる。
「えええっ?友芽ちゃん、どうしたの?なに?彼に作ってあげるの?」
「ええ、まあ」
「そうねえ。そっか。早坂さんなら、舌も肥えてそうね。えっと、彼、普段どんなもの食べてるの?」
早坂さん?関口さんにも早坂さんの事、知られてたんだ。彼の話なんか、直接したことなかったけど、説明しても、もう遅いか…別れちゃってるし。
面倒だから否定しない。
「えっと、塩鮭とか、お味噌汁とか」
「そうなの?へえ…意外だね」
確かに。朝定食を、早坂さんが食べてる姿なんか想像出来ない。
私は、思わずクスッ…と笑う。
「私は、スーパーに行ってから決めるかな。その日の特売とか、後は、給食とかぶらないとか」
「えっと、ですね。あんまり作ったことなくて、その…材料を見ても、何を作ったらいいのか分からなくて」
「うん、そっか…そういう時なら、作ったことがあって失敗しない料理がいいかな」
「んん…カレーとか、ハンバーグとか」
「いいんじゃない」
「ありがとうございます」




