同居人ー10
ーもう、会社着いた?
絵梨から連絡が来た。
着いたよ。と返す。
五分もしないうちに、絵梨がやって来る。
絵梨のいる経理課と、私のいる総務課は同じ管理部門だけれど、各課ごとにパーティションで区切られていて、直接は見えない。
だから、一応確かめてからお互いに行き来する。
「ずいぶん、早いのね」
早く来たことに、意味なんか無いよと言って、その後、私は絵梨のことを無視した。
立ち上げておいた、パソコンのメールをチェックする。
絵梨が画面をのぞきながら言う。
「日曜日からずっと、
電話待ってたんだけどな」
「ごめん…精神的にも、肉体的にも
そんな気力なかったから」
私は、目頭を指でつまみながらいう。
そうだった。自分のことばかりで絵梨のことを忘れてた。
「肉体的に?宗佑ったら、やるなあ」
「なに、勘違いしてるの。
志賀くんとは、そんなんじゃないから」
まだ…だけど。
「でもさあ、二晩も一緒にだよ。隣で友芽が寝てたら…」
私は、絵梨の口を塞いだ。
周りには、もう何人も人がいる。
本当に声大きいんだから。
「言ったでしょ。志賀くんとは、そんなんじゃないって」
「あり得ない…だって、木原友芽よ。
ダイナマイトボディがすぐ横で寝てるのに。手を出さないなんて」
絵梨が、ポーズをとって腰をくねらせる。
そのポーズは、止めてと何度も言ってるのに。
「それどころじゃなかったの。本当に」
私は、何度もため息をつく。
「う~ん。宗佑もいざとなるとねえ。臆病になるか。でも、これからは?せまってきたらどうするの?」
絵梨が身を乗り出して聞く。
「どうもしないよ。変な想像してないで。ほら、もう始業時間過ぎてるよ」
今のところ、そんな気配はまったくない。きれいにスルーしてくれてる。ノーブラは止めろって釘刺されたくらい。
「だって…課長いないし…」
絵梨がすねたみたいに言う。
「課長がいなくても、やること
あるでしょ」




