同居人ー9
週明け、会社に出勤する。
志賀くんの部屋から、バタンとドアの開く音。
「ちょっと待って、志賀くん、出るの早くない?」
これからメイクをしようと思ったところで、
「俺、もう行くから!」
という、志賀くんの声…と共に
ガチャという、ドアの開く音。
「ちょっと、待ってよ!」
私のアパートとこの家って、距離的に同じくらいだ。だから、会社までの通勤時間ってほとんど変わらないはずなのに、いつもより30分は早い。いつもの時間に出ても、充分間に合うのに。
「先に行くから。鍵ちゃんと閉めとけよ」
と志賀くん。
もう一度、ガチャンと閉まる無情な音。
「ええっ…」
追いかけて行きたいけど、メイクが終わってない。志賀くんは私を置いて、さっさと出かけてしまった。
昨日から一緒に出勤しようって、言ってたのに…
駅までの道順分からないよ。
やられた。
こんなに早く行くとは思わなかった。
もう…
もう、仕方ないか…
携帯にナビあるから、どうにかなるかな。
支度をして、家を出ようと思ったら、
キッチンのテーブルの上に、白い紙が無造作に置いてあるのに気づいた。
何だろうと思ったら、駅までの地図だった。
ご丁寧に拡大して、赤ペンで近道まで書かれてる。
「ありがとう…志賀くん。
でも、腕組んで歩きたかったな」




