事件-14
「志賀くん、私んちここだから」
「ああ」
志賀くんは、立ったままポケットに手を突っ込んで、早く行けと目で合図する。
私が部屋に入るまで待っててくれるってことか。
そんな、ぶっきらぼうな言いかたしたら、彼女になってくれそうな子を、怖がらせちゃうじゃないの?っていじりたくなる。
私は、余計なことが、口から滑り出さないように気をつけて、鍵を出して階段を上がった。
アパートは、表通りから一本入った通りにある。ちょっと古いけど、キッチンとリビングが分かれたタイプ。
防犯面ではどうかなって、早坂さんに気になるって言われたけど、今まで何もなかった。
アパートの階段を上がってすぐに、何かおかしいと思った。
鍵を閉め忘れても、ドアを閉め忘れることはない。
ドアが完全に閉まってなく、少し浮いている。
どうしよう…
「どうしたの?」
下から志賀くんが声をかけてくる。
「わからない」そういいたかったけど、声が出なくて首を振った。
声を出してみたものの、震えてまともに聞こえてないと思う。
ドアは、転がった靴の先が引っ掛かって中途半端に開いていた。
「どうしたの?」
様子が変だと思ったのか、志賀くんが階段を上がって来た。
彼は、すぐに事態を飲み込んだのか、すぐにそこから出ろと言って私を玄関から外に出した。
「そこにいて」と私を通路に立たせると、ドアを全開にして、部屋の電気をつけた。
私は、恐る恐る志賀くんの後ろから、のぞきこんだ。
「キャッ!」
私は、部屋が明るくなって、浮かび上がった様子を見て、驚いた。




